広告
広告

News

2016.12.14

認知症事故の賠償、公的な救済制度の創設は見送り 民間保険の活用促す 政府

 


《 関係省庁連絡会議 13日 》

認知症の高齢者が起こした事故の損害をどう救済すべきか。政府は13日、当事者の支援にあたる団体などが提案していた公的な補償制度の創設を見送ることに決めた。
 
損害が高額になるケースが少ないことと、モラルハザードへの対応など課題が多いことを理由にあげている。民間保険への加入を促しつつ、地域の見守り体制を強化する施策を引き続き展開していくという。厚生労働省や国土交通省、金融庁などが参画する「関係省庁連絡会議」で、こうした方針を確認した。
 
議論が始まったきっかけは、認知症で徘徊していた男性が列車にはねられて亡くなった2007年の事故。運行に支障をきたしたJR東海は、乗客の振り替え輸送にかかった費用など約720万円の支払いを求めて提訴した。そうした重い賠償を家族に強いるべきなのか。裁判の行方が大きく注目された経緯がある。認知症に起因する事故は防ぐのが難しく、誰もが巻き込まれて損害を被るリスクを抱えていることから、公的な補償制度が必要との声も強まった。
 

「新たな制度的対応は難しい」

 
こうした動きを受けて、国は具体策を検討するための実態の把握に着手。この日、その成果を明らかにした。
 
それによると、2014年度に認知症の高齢者が関係する鉄道事故は29件あり、確認できた最高の損害額は120万円だったとされている。保険会社に尋ねたところ、認知症が原因の加害行為で家族などが賠償することになったケースは、1社につき年間で数件程度だったという。損害額は数万円から数十万円と報告されている。
 
「関係省庁連絡会議」ではこれらを踏まえ、「損害額が高額となる事案が多発しているという事実は確認されなかった」と整理。加えて、「損害をカバーする範囲をどう考えるか、財源、モラルハザードへの対応も含め幅広い議論が必要」と説明し、「直ちに新たな制度的な対応をすることは難しい」と結論づけた。見守り体制の充実に向けた自治体の取り組みを後押しするほか、民間保険の紹介・普及などを行っていく考えを示している。
 

 家族の会「非常に残念」

 
こうした国の判断について、電話での取材に応じた「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は、「非常に残念」と語った。「認知症は誰でもかかり得る病気で、鉄道会社であれ家族であれ徘徊による事故を完璧に防ぐのは不可能。被害者と加害者、どちらにも落ち度がない事故で発生した損害は、金額の大小に関わらず公的な補償制度でカバーすべき」と主張した。民間保険の活用を促すことについては、「思わぬ事故が起きた時に、『なぜ加入していなかったのか』と家族が追及される流れにつながらないか」と問題を提起している。


広告

広告