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2017.1.29

介護福祉士の国試、申込者が前回の半分以下に急減 実務者研修の義務化が影響

 


《 前回の国試の合格発表会場 》

29日にペーパーテストが行われた今年度の介護福祉士の国家試験 ー 。資格の取得を目指して手続きをした人が、前回の半分以下にまで減少したことが明らかになった。
 
社会福祉振興・試験センターによると、今年度の国試を受験するための申込みをした人は7万9113人。昨年度の16万919人、一昨年度の16万2433人の5割を下回る急激な落ち込みとなった。いわゆる「実務経験ルート」の要件に、最大で450時間の「実務者研修」の修了が新たに加えられたことが、最大の要因とみられる。
 
「実務経験ルート」ではこれまで、介護職員として仕事を3年間続ければ国試に挑戦することができた。実務者研修が必須とされたのは今年度から。資格の無い人なら450時間、ヘルパー2級を持っているか「初任者研修」を終えている人なら320時間、ヘルパー1級を持っている人なら95時間の研修を受けなければいけなくなった。目的は、現場の経験だけでは身に付きにくい体系的な知識や技術を学んでもらうこと。専門職としての資質・地位の向上やサービスの質の底上げに結びつける狙いがある。
 
一方で、「負担が重くなりすぎる」との懸念は以前から出ていた。働きながら長時間におよぶ研修をこなすのは大変で、補助などがなければ受講費を自腹で払わないといけないためだ。加えて、努力して資格を取っても賃金が大幅に上がるケースは少ない。「割に合わないのではないか…」。そんな不満がくすぶり、与党内からも「人材確保に逆行する」との批判が噴出していた。
 
厚労省はこうした声を踏まえ、もともと2012年度を予定していた実施の時期を今年度まで繰り返し延期。通信教育の活用や費用の助成といった支援策も講じ、チャレンジする意欲を削がないようにすると説明してきた。国試の申込み者が半減した今回の事態については、「まずは状況を詳しく把握して対応を考えていきたい」としている。今後、養成課程の見直しをめぐる議論が再燃する可能性もありそうだ。
 

「本末転倒。完全な失敗」

 
淑徳大学の結城康博教授は、「高邁な理想を優先して現場の実情を考慮しなかった結果。介護福祉士を志す人が減ってしまっては、サービスの質の向上にもつながっていかない。まさに本末転倒で完全な失敗だ」と指摘。「たんの吸引などの医療行為を教える内容のみに実務者研修を縮減し、受講費の補助も拡充するなど、まずは介護職員の負担を軽くする対策を早急にとるべきだ」と主張した。また、長期的に実現を目指すべき人材育成の方向性として、「介護福祉士と准看護師を統合し、業務独占資格として『療養介護福祉士(仮称)』を新設してはどうか。ニーズの高い医療行為をカバーでき、介護職の地位の向上や処遇の改善につなげられる。看護師不足の解消にも寄与する」と提案している。
 
他方、取材に応じた日本介護福祉士会の石本淳也会長は、「国試の申込み者が半分以下となったインパクトは確かに大きいが、ネガティブに捉えるだけでなく前向きな動きにつなげていきたい」とコメントした。「サービスを受ける方の立場からどうかという視点を中心に置きつつ、より良い養成課程のあり方、介護職員の地位の向上や負担の軽減、業界の発展、人材の確保といった多面的な視点を持ち、様々な意見を聞いて幅広い議論をしていきたい」と話している。


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