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Report

2017.2.21

なぜ今、ICTを活かした効率化が必要か? Apple銀座で語られた「介護の未来」

 


《 アップル 銀座 16日 》

「テクノロジーが変える介護の未来」。Apple銀座のシアターに今月16日、そんな意欲的なテーマが映し出された。ICTのフル活用をテーマに据えたトークイベントだ。何が語られたのか?
 
新たなシステムを導入してうまく機能させようとすれば、最初はどうしても一定の時間、コストがかかる。コンピュータを苦手とする職員がいれば、定着させるまでの苦労はより大きくなるだろう。日々の業務に追われて先送りしてしまいがちだが、登壇者は実践すれば多くのメリットが生じると口を揃えた。事業者・職員だけにとどまらず、利用者や家族、地域、業界と様々なレベルに効果が波及していくという。
 
マイクを握ったのは4人。株式会社グレートフルの代表で介護事業やそのコンサルタントを手がける岩崎英治氏、都内のデイサービスのマネージャーでNPO法人「Ubdobe」の理事も務める中浜崇之氏、介護ソフト「カイポケ」など多くのサービスを展開する株式会社エス・エム・エスの藤田和大氏と、モデレータを務めたフリーアナウンサーの町亞聖氏だ。
 

「本来の仕事に徹してもらえる」

 
セッションは現状の整理から始まった。社会保障費の抑制は国の最大の課題の1つで、これから基本報酬が大きく引き上げられる期待は薄い。必ずしもこの分野だけではないが、必要なマンパワーの確保はさらに難しくなっていく。異業種の大手の参入や事業所の乱立によって、競争も一段と激しさを増してきた。業界を取り巻く環境は明らかに厳しくなっている。相応の力をつけていかないと、事業が立ち行かなくなる事態に陥りかねない。そんなところだ。
 
話題はICTに移っていく。ペーパーワークや情報の整理・共有を効率化する最新のソリューションが、事業者を支える大きな力になるそうだ。毎月の保険請求や日々の記録、報告、引き継ぎ、伝達などの手間を大幅に減らして、余計な人件費の節減を図れる。現場にかかっている負担を軽くし、生まれた余力でよりきめ細かいケアを提供してもらうことも可能だ。売り上げなどのこまめな把握も容易になるため、経営判断に必要な材料を集めるのもスムーズにいく。かさばるファイルを持ち出す必要はない。直行直帰で事足りる日も増やせる。緊急時はスピーディーな対応がとりやすい。こうした認識が共有された。
 
「求めていた本来の仕事に徹してもらえるようになった」。岩崎氏は職員の満足度、やる気も上がると解説。「介護をしたくて入ってきた人たちにいつも書類を作らせていた」と振り返る。毎日の事務を省力化できれば、高齢者の時間の流れに身を置いて本人と向き合う機会が増えていく。地域への貢献をメインとする活動にも、より積極的にコミットしていけるようになる。岩崎氏は、「結果として以前より地域に根ざした事業所になっていた。経営の観点でみても大きい」と話した。
 
ICTでゆとりが生まれ、個々の職員がモチベーションを向上させて視野を広げることは、利用者や地域にとって大きなプラスとなる。利点の話が続いていく。「以前より利用者の状態の変化を追いやすくなった」と言うのは中浜氏だ。「日々の様子を細かく残していく作業がずっと楽になる。手書きだと大変でどうしても記載漏れが生じてしまう」。スマートフォンなどで撮った写真を記録に添付し、家族と共有できる機能も効果的だと説明。「事業所での過ごし方や表情が伝わり安心してもらえる。写真は本人・家族の楽しみのひとつになる」。サービスの充実に役立てているようだ。
 

「業界を良い方向にもっていく」

 
現場からの要請に応えるように、タブレットやスマホで操作できるクラウドベースの高機能ソフトが続々と開発されており、それぞれアップデートを繰り返している。厚生労働省も動き出した。普及を促すための報酬や基準の見直しを、2018年度の改定に向けて検討している。「取り残されないように踏み出すなら今」。そんな事業者の声を聞く場面も増えてきた。
 
さらなるイノベーションを起こし得るポテンシャルにも話が及んだ。「実際にどんなサービスが提供され、それを受けた利用者がどのように変化していったのか。そうしたデータが蓄積されていく。しっかり分析していけば、サービスの質の底上げにつなげられる」。藤田氏の言葉だ。「我々の頑張りどころ。集まったデータをいかに介護業界全体の健全化のために使っていけるか。大事なミッションとしてやり遂げたい」と前を向いた。中浜氏も、「ICTを活かせば介護の根拠を積み上げていけるかもしれない。そこから病気や怪我、重度化のリスクを小さくできる可能性もある」と同調。「テクノロジーを遠ざけず、うまく付き合ってより良い方向にもっていきたい。そうすれば介護を日本が誇る産業にしていけるはず」と呼びかけた。


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