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Interview

2017.7.24

「姥捨て山? 全く違う。良い選択肢になる」 杉並と南伊豆の特養、今後の展望は?

 


《 杉並区が開いた住民向け説明会 15日 》

杉並区が来年3月、長く交流を持つ静岡県南伊豆町に特別養護老人ホームを開設する。入所申し込みの受け付けは24日から開始される。ベッドが空くのを待つ人たちの新たな選択肢になるのではないか ー 。そんな期待が膨らんでいる一方で、一部では疑問の声も上がっているようだ。施設の整備に至った背景や狙いについて、杉並区役所を訪ねて聞いてきた。保健福祉部の森山光雄課長に加え、特養の運営を担う社会福祉法人「梓友会」の川島優幸理事長が答えてくれた。
 
  ーー 今回の取り組みが実現に至るまでの経緯を教えて下さい。
 

  森山課長
杉並区内には特養の入所希望者が多いんです。直近の今年6月で言うと約1000人にのぼります。対応を考えていた2011年ごろ、40年近く交流がある南伊豆町に「保養地型特養」を建設できないかという構想が持ち上がりました。それから国や関係機関などと協議を重ねてきたんです。厚生労働省から一定の評価を得たのは2013年ごろ。その後、関係法令の改正や県、町、区による基本合意を経て、事業者の選定、施設の着工と進んで今に至っています。
 
  ーー 南伊豆町に建設する狙いは何でしょう?
 
  森山課長
杉並区でも、統廃合後の学校の跡地や国有地などを施設に活用する計画を進めていますが、やはり特養に適した広い土地が足りないんです。今回の南伊豆町の施設では、区内ではとても確保できない広い敷地(6600平米)を確保することができました。
 
  川島理事長
まず1つ、新しい雇用の場を生むということがあげられます。すでに伊豆周辺の方、20人ほどが来年から働くことが決まっています。ケアの質という観点でみてもきっとプラスですよね。文化の違う都会の人を受け入れることで、職員は新しい気付きを得られるでしょう。また、地方の特養では定員割れが起き始めてきました。今回のケースで言えば、90名の定員のうち50名程度を杉並区から来られる方とする計画です。地方にも特養に入りたいという方がいますから、そういう方を受け入れつつ運営を維持していけるというメリットも大きいでしょう。
 
  ーー 一部でいわゆる「姥捨て山」になるのではないか、との批判も出ているようですが…?
 
  川島理事長
「姥捨て山」の「人を減ずる」という意味合いは、「雇用を増やす」「街づくりに生かす」といった我々のプラスの発想とは相反するものです。全く違うものかと思います。それと、介護をする家族ってそれぞれ複雑な課題を抱えていますよね。困りごとの中には緊急性を要するものだってあるでしょう。「今日、今をどうするか」という利用者・家族がいた場合、我々の施設へいったん入所していただくのも一考です。それからその後のことをじっくり考えて頂く。都市部の方にとって良い選択肢の1つになるのではないでしょうか。
 
  森山課長
杉並区としても、お年寄りの選択の幅を広げるという考えを持っています。例えば、静岡県の出身で老後はそこで暮らそうと考えている人や家族の近くに移りたい人、自然豊かな環境で暮らしたい人もいるでしょう。もちろん、本人の意思を尊重することが大前提です。
 
  ーー こうした動きは広がっていくでしょうか?
 
  川島理事長
施設の運営を始めて落ち着いたら、利用者の満足度や家族が不都合に思う点などを精査する必要があるでしょう。もっとも、大都市圏はしばらくすると医療も介護もかなり大変な状況になるとみているので、改善を重ねながらも私自身はこうした動きが発展していって欲しいと思います。
 
  森山課長
南伊豆町さんと今回の取り組みを進められたのは、40年来の付き合いがあってこそ。同じように他の自治体とうまくやれるかというと、色々と課題が出てくるかもしれませんね。ただ現在、都内の交流自治体である青梅市さんと情報交換を行っているんです。今回の経験を踏まえ、より良い取り組みにつなげていければと考えています。
 
  ーー 介護関係者へ何かメッセージを
 
  川島理事長
今回、ひとつの新しいモデルとしてこういった手法が提示されました。専門職は怯むことなく新たなことに向き合い、チャレンジしていくべきだ ー 。私はそう思っているんですね。新たな動き、取り組みに自分がどう関われるのか。疑問があるなら実際に行動し、成果や課題を検証し見極めて次につなげていく。そういう前向きな姿勢で、果敢にトライしてもらいたいですね。
 
  森山課長
杉並区と南伊豆町は離れていますが、お互いの行政課題を解決するために今回の形をとらせていただきました。全国初の取り組みです。介護の現場に携わる方とともに、高齢者福祉、ケアの充実に取り組んでいきたいと考えています。

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