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Interview

2017.10.19

処遇改善、給付抑制、規制緩和… 投票日間近!! 介護分野の論点は何か!?

 


22日の投開票日まで残りわずかとなった今回の衆院選。「自民党・公明党」「希望の党・日本維新の会」「立憲民主党・共産党・社民党」。解散後の政変に起因する揺らぎはみられるものの、主にこの3極を軸に激しい論戦が展開されている。
 
マスコミ各社の世論調査によると、今のところ与党が大きなリードを保っているようだ。ただし、最終盤で情勢が変化する可能性も否定できない。介護の現場を支える人は、各党の施策やスタンスをどう捉えればいいのか? どんな視点を持って投票に臨めばいいのか? 淑徳大学・総合福祉学部の結城康博教授に考えを聞いてきた。(聞き手・編集 Joint編集部 青木太志)
 
  −− 特に介護の分野について、安倍政権のこれまでの施策をどうみていますか?
 

《 淑徳大 結城教授 》

採点するなら50点。「介護離職ゼロ」という目標を明確に掲げたこと、介護職員の賃上げに踏み切ったことを評価しています。施策の柱に介護をしっかり位置付けた内閣は過去にありません。「掛け声だけ」という批判も分かりますが、「一歩前進した」とポジティブに捉えることもできるでしょう。
 
  −− 評価できない点は?
 
社会保障費の自然増を毎年5000億円ほどしか認めないことですね。自然増を抑制しようとすれば必ず無理が生じます。前回の介護報酬改定での大幅な引き下げがいい例でしょう。事業所の体力を弱らせ、現場に深刻な疲弊をもたらしました。処遇改善加算の拡充で介護職員の賃金を上げても、これでは目的が十分に達成されません。特養の入所者を原則として要介護3以上に限定したり、軽度者へのサービスを市町村の総合事業へ移したりする改革も、自然増を抑制する方針のもとで行われています。
 
  −− 今回の衆院選で自民党・公明党を選択するということは、この業界にとってどんな意味を持ちますか?
 
これまでの基調を存続させる、ということではないでしょうか。来年度も社会保障費の自然増を抑制する方針が示されており、介護報酬改定をめぐって引き続き厳しい議論が行われる見通しです。次の選挙は2019年の夏。少し時間があくので大幅なマイナス改定を断行するのではないか −− 。そんな観測も飛び交っています。一方で、安倍首相は介護職員の更なる賃上げを明言しました。消費税率の引き上げによる増収分を使うと言っていて、財源をどう確保するかも明確にしています。自民党と公明党の公約にも、介護職員の処遇改善が盛り込まれました。安倍政権がこのまま続けば賃上げは近く実現するでしょう。
 
  −− 希望の党をどうみていますか?
 
「規制改革と社会実験を大胆に進めていく」「民間の活力を最大限に引き出し、潜在成長率を底上げする」。公約にはそんな方針が並びました。小池代表の発言を追ってきましたが、「パラダイムを変えていきたい」「発想を転換しましょう」などと繰り返し訴えています。かなり思い切った改革を志向する傾向が強い −− 。そうみるのが妥当だと考えています。ベーシックインカムの導入はその象徴ではないでしょうか。小池代表は都知事として、保険外のサービスを柔軟に組み合わせる「混合介護」を推進しています。公約で打ち出した考えとマッチしており、国政でも同じスタンスをとってくるでしょう。
 
  −− 日本維新の会は共鳴する部分が多いようですね。
 
維新の公約も「徹底した規制緩和」が柱のひとつです。イコールフッティングを確保する方向で社会福祉法人の制度を見直す、とも書き込まれました。希望や維新が力をつければ、市場の原理に委ねる部分をもっと大きくしようとするでしょう。もしそうなれば、高齢者をターゲットにしたビジネスの機会が大きく広がります。収益を伸ばしたい民間企業にとって、今が千載一遇のチャンスではないでしょうか。経済的にゆとりのある高齢者の選択肢が増えたり、一部の介護職員の賃金が上がったりする期待もあります。一方で、競争や格差がさらに激しくなっていく可能性は否定できません。こうした論点をどう捉えるべきか −− 。それぞれの立場や考え方によって異なりますよね。
 
  −− 立憲民主党の健闘が報じられています。
 
いわゆる「アベノミクス」への批判も込めて、ボトムアップ型の経済政策を目玉のひとつに据えています。低所得層を引き上げたり、中間層の厚みを増したりして内需を拡大させる −− 。そう訴えています。社会保障制度の充実は大きな柱で、立憲民主党や共産党、社民党が力を持てば実現を目指すでしょう。自然増の抑制や介護報酬のカットなどは避けるはずで、介護職員の処遇も改善すると約束しています。この勢力のウィークポイントは財源論。所得税や相続税、金融課税の見直しなどに触れているようですが、本当にそれで十分なのでしょうか? 消費税の引き上げも凍結すべきと主張しています。彼らは夢を語っているだけではないか −− 。そう断じる方は少なくないと思いますが、あくまでも理想の実現を追求するという一貫した姿勢を崩していない、とみることも可能なのかもしれません。

  −− 介護の分野でも3極の立場はそれぞれ異なりますね。
 
どの政党も大きく間違ってはいないでしょう。どの立場にも正しい面があると思います。給付費の伸びを容認して今の制度の充実を目指すべきか、規制を緩和して市場の原理にもっと委ねていくべきか −− 。既存の路線が最も現実的だと考える方もいるでしょう。高齢者がますます増えていくこと、若い働き手がどんどん減っていくこと、国の財政が逼迫していることは共通の認識です。2000年にスタートした介護保険は今、かつてないほど重要な岐路にさしかかりました。これからどんな方向へ進んでいくべきでしょうか? 今回の衆院選は、そのことを改めて問い直す機会にして頂きたい。現場の皆さんにはぜひ、それぞれの立場で考えて投票所へ行って欲しいと思います。

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