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Column

2016.11.1

今後期待される生活支援サービス

 

平成27年度の介護保険制度の改正は記憶に新しいと思います。要支援1・2と認定された高齢者の訪問介護と通所介護が地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業、いわゆる新しい総合事業に移管しました。つまり、全国一律の予防給付から各市町村独自の取り組み努力が求められる地域支援事業に移行し、多様化する高齢者のニーズに応えようとするものです。この施策により、既存の介護事業所だけでなく、NPO、民間企業、住民ボランティア、協同組合等による多様な主体が提供する生活支援サービスへの期待が今後さらに大きくなっていくことが想定されます。
 
地域包括ケアシステム構築の責務を担っている自治体は各地域の実情を捉えながら、様々な活動を行っています。ここでは、いくつかの面白い事例を紹介します。
 

1. 「太極拳のまち宣言都市 喜多方」

 
1つ目は、「太極拳のまち宣言都市 喜多方」という、主に高齢者を対象とした事例です。平成14年10月の「うつくしまねんりんピック2002太極拳交流大会」が喜多方市で開催されたことをきっかけとして、太極拳を通し「健康 福祉 教育 交流」の調和のとれたまちづくりを目指すことになりました。平成17年度から、独自の視点で有効な介護予防サービスを検討するべく、介護予防における太極拳の健康効果に着目し、福島県立医科大学の安村誠司教授、会津保健所との協働で、「太極拳の要素を取り入れた体操」の作成に着手し、段階的に検証を進め、平成19年度に「太極拳ゆったり体操」(注1)を完成しました。「太極拳ゆったり体操」の効果検証の結果、「バランス機能の向上」「下肢筋力を中心とした全身の筋力アップ」に効果があることが明確になっています。現在では、1,300名を超える喜多方市民が太極拳に親しんでおり、今後、愛好者数を3,500名に増やすことを目指して活動しています。
 

2. 神奈川県の「マイME-BYOカルテ」

 
2つ目に、自治体主導でICTを活用した先進的な事例を紹介します。神奈川県の「マイME-BYOカルテ」(注2)です。神奈川県のホームページによると、「マイME-BYOカルテ」では、お薬情報のほか、薬による副作用の記録、アレルギーの有無、これまでかかった病気、ワクチン接種歴なども登録できます。また、本人だけでなく、子供等の家族の情報も登録・閲覧できます。災害時に紙のお薬手帳を失ってしまったとしても、データは残ります。なお、このサービスは高齢者だけでなく神奈川県民すべてが利用できるものです。 また、自治体だけでなく、各主体が各地域で様々なアイデアを出しながら試行錯誤している事例も出てきています。平成28年4月から「かかりつけ薬剤師・薬局」制度が新たにスタートし、各地域の薬局は、医療機関をはじめとする関係機関との連携や、ICTを活用した服薬情報の一元的管理等が求められています。それに合わせて先進的な薬局では店頭にバイタル機器等を設置し、スタッフによる常時サポートを行っているところもあり、さらには地域の自治体や小売業との連携を行おうとしている薬局等も出てきています。
 

3. 地域住民が安心・安全で充実した生活を送るための生活支援サービス創出に必要なこと

 
今後、各地域に根差したヘルスケア産業の創出がさらに求められるようになるのは必至であり、その動きが加速していくことは間違いないでしょう。そのためには、公的な医療保険・介護保険から、公的保険外の運動、栄養、保健等のサービス、さらには農業・観光等の地域産業やスポーツ関連産業等までつながっていくことが想定されます。そこでは、医療や介護、福祉といった情報を民間ビジネスへつなぐためのICTプラットフォーム、さらにそれを支えるためのビジネスプラットフォームが必要になってくるのではないでしょうか。各個人が生まれてから亡くなるまでの生涯にわたった情報はもちろん、個人に関わる家族等、“世帯”といった観点を意識していく必要がありますし、制度や技術等の壁があるかもしれません。もしかしたら、最も重要で難しいのは住民の正確な理解かもしれませんし、ハードルになるのは我々のような民間ビジネスを行う企業の倫理観かもしれません。
 
今後、各地域で暮らす地域住民が安心・安全で充実した生活を送るための生活支援サービス創出の動きは活発化することは間違いありません。そのために、それらの動きを注視するだけでなく、私たちに何ができるのか、その答えを模索しながら、富士通総研も各地域のまちづくりに貢献していきたいと思います。


 注釈
(注1) 太極拳ゆったり体操(喜多方市)
(注2) マイME-BYOカルテ(神奈川県)


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この記事は、2016年10月20日の富士通総研 オピニオンより転載

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