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Column

2017.1.29

マンションの一人暮らし高齢者の見守りのあり方

 


 激増する一人暮らし高齢者

 
総務省の2015年国勢調査によると、日本の総人口は1億2709万4745人となり、2010年の前回調査から約96万人減少した。75歳以上の後期高齢者は1612万人で約8人に1人となり、14歳以下の子どもの1588万人を初めて上回り、人口減少と少子高齢化が進行している。
 
世帯の状況を見ると、一人暮らし世帯が5344万世帯まで増加しており、65歳以上の高齢者の6人に1人が一人暮らしである。高血圧などの持病はあっても、子どもと同居せずに生活する高齢者が増える一方で孤独死が社会問題となっている。
 
現在、全国の市町村は緊急通報システムを提供するなど、孤独死対策に取り組んでいる。本コラムでは、「普段の安否確認」と「突発的に体調が悪くなったときの医療機関への搬送、受診支援」などの家屋内の見守りについて考察する。
 

 千葉県浦安市の挑戦:マンションの一人暮らし高齢者の見守り実証試験

 
市町村の取り組みの一例として、千葉県浦安市が2016年度に実施しているICTを活用したマンションでの一人暮らし高齢者の見守りの実証試験を紹介する。
 
浦安市は、市域の約4分の3を1960年代後半以降に造成された埋立地が占める。東京都心までの交通アクセスの良さ、東京ディズニーリゾートがあること、埋立地という利点を生かし計画的に整備されたマンション群の住環境の良さ、住民と行政が連携したまちづくりも盛んで、住宅地として全国でも有数の高い人気を誇る。
 
こうした経緯から同市はマンション居住者が多いが、マンションは、侵入口が入り口ドアしかなく、緊急時でも窓ガラスを破って救出することができない構造の物件が多い。マンションの管理組合や管理会社は鍵を預からないことが多く、居住者が室内で倒れていても自分で鍵を開けられない場合、救出できないことが市の課題であった。
 
そこで、市はセンサと宅配の預かりロッカーの鍵開けシステムの技術を有するメーカーと介護事業者の業界団体(一般社団法人全国介護事業者協議会)と連携して、市内の高層マンションの老人クラブと住民の協力も得て、約半年、実証試験を行い、見守りのあり方を検討した。
 

 浦安市のICTと人を組み合わせた見守りの仕組み

 
実証試験における一人暮らし高齢者世帯に設置する機器構成は、親機1台と子機3台の組み合わせを基本とした。
 
○ 子機1は、居間・寝室などに設置して、「生体センサ」により非接触で体動・呼吸などの生体情報を検知する。さらに温度・照度などを検知することにより、居住者の活動・安静状態や生活環境の情報を取得する。
 
○ 子機2は、玄関・廊下・洗面所・トイレなどに設置して、「人感センサ」で温度・湿度などを検知することにより、居住者の活動情報を取得する。
 
○ 子機3は、玄関ドアに設置して施錠状態の時に居住者が屋内で倒れるなどした場合、遠隔操作で玄関ドアを開錠する。
 
○ 親機は外部や子機との通信とデータ解析に使用する。
 
センサ情報から通常と異なる状況を察知すると、予め通報先として登録された別居の家族、近隣住民などにアラーム(警報)をメールで知らせる。アラームを受け取った家族、近隣住民は本人への確認や駆けつけを行う。緊急の場合には、予め決めておいた家族等の特定権限者が遠隔操作で開錠を行い、駆けつけた家族や近隣住民が中に入り救助活動を行い、玄関ドアを破壊することなく救助できる。
 
既存の技術や社会資源の組み合せにより、「居住者が機器を身につける必要がなくわずらわしさがない『非接触型』である」「自ら緊急通報を行わなくてもセンサが緊急事態を判断してアラームを発する」「家族や近隣住民がアラームをメールで受け取れる」「鍵を預けたりドアを破壊することなく鍵を開けられる」という仕組みを構築し実証を行った。
 

 浦安市の実証試験から得られた課題

 
実証試験からは、以下のような課題が明らかになったとのことである。
 
(1)必要性の認識のずれ
家族や近隣住民は心配だが、高齢者自身はまだ大丈夫、監視されているようだと感じるなど、見守りの必要性の認識にずれがある。
 
(2)高齢者の機器操作
高齢者同士の見守りを実現するためには、高齢者自身の携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコン等の操作が必要となるが、一般に高齢者は機器の操作に不慣れである。
 
(3)機器の性能の改良の必要性
「生体センサ」の誤認識(ペットや置き時計の振り子の揺れを人の呼吸や動きと検知するなど)、センサの検出エリアの限界(部屋が広いとセンサが届かず死角ができるなど)、異常判定の困難さ(体調不調で倒れている時と睡眠状態との判定ができない)の改良などが必要。
 
(4)運営主体、体制の確保
信頼できる仕組みの運営主体の確保、個人のニーズに合った見守り方法の提供、駆けつけ体制の整備が課題となる。
 
(5)費用負担
機器設置の初期費用、毎月の運用管理費用、駆けつけが発生した際の料金等の費用負担。
 

 2025年に向けて

 
実証試験に参加した住民の一人が、「私は施設や病院からではなく、自宅マンションからあの世に旅立ちたい。そのためにはICTと人を組み合わせた見守りのしくみが今後は必要だと思う」と冗談混じりにおっしゃっていた。
 
個人の住まいに見守り機能が付けば、介護施設等に住み替えるまで自宅で暮らす期間を延長することができる。団塊の世代が75歳以上となる2025年までに8年を切った今、各地の取り組みの成果や課題を共有化し、国全体として見守りの仕組みの整備が着実に進むことを期待したい。


* この記事は2017年1月24日のみずほ情報総研のコラムより転載
 

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