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Column

2017.10.25

特養の入所基準、本当に妥当? 要介護度だけで真のニーズは拾えない

 


《 工藤章子 》
社会福祉法人浴風会 第二南陽園 主任生活相談員

東京都高齢者福祉施設協議会 ソーシャルワークヴィジョン 検討小委員会 委員長

2015年度の介護保険制度改正により、特養の入所基準が原則要介護3以上とされた。それにより我々の周囲の景色が変化している。改正前に比べ重度化はさらに進行、いわゆる「待機者」は15万人も減少した。
 
一方、要介護認定を受けている高齢者は600万人を超えた。介護を必要とする人はさらに増えており、制度の狭間にいる高齢者の存在が懸念されている。
 
認知症など何らかの重い課題を抱えているにもかかわらず、要介護3未満で特例入所に該当しない高齢者と家族の負担はかなり大きい。また、自己負担の度重なる引き上げによって「利用控え」が起きていないかどうかは、全国的な実態把握すらできていないのが現状だ。東京都高齢者福祉施設協議会の調査では、経済的困窮が原因で特養に入所できないケースが増えたと報告されている。
 
本来、施設入所が必要であるかどうかは要介護度だけでは判断できない。軽度であるが認知症によって自立した生活が営めず、常時見守りを必要とする高齢者もいる。経済的に苦しい人も少なくない。要介護度だけで真のニーズは拾えない。
 
もちろん、制度の狭間にいるのは軽度者ばかりではない。重度の方々にも目を向ける必要がある。
 
同協議会が都内の実態を調査した結果、待機者の40%以上が何らかの医療処置を必要としていることが明らかになった。入院加療中の方も少なくない。実際に入所のご案内に行くと、病院から早く転院・退院するようにと催促されているにもかかわらず、施設では提供できない医療処置を受けている方もおられる。長期の入院がなかなかできない今、特養にも入所できず行き場のない高齢者は増加している。
 
このほか、身寄りのない高齢者が施設入所の際に身元引受人が誰もいない、という問題もある。成年後見制度の申し立ては負担も大きく、スムーズな活用につながっていない現状がある。これは今後ますます増えていく単身世帯の課題だろう。
 
相対的に費用が安く質の高いサービスを提供する特養の問題は社会全体の問題だ。制度の狭間にいる行き場のない高齢者の実情に目を向け、今後のあり方を改めて考え直さないといけない。国は医療ニーズへの対応を論点にあげており、今後の動向を注視する必要がある。原則要介護3以上とした入所基準の見直しも必要ではないか。

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