広告

Focus

《 2019.10.23 》

焦点の介護の自己負担、なぜ今引き上げ? 2割・3割の対象はどこまで?


介護保険サービスを利用する際の自己負担割合の引き上げをめぐる議論が活発になってきた。背景には高齢化などに起因する給付費の増大がある。

広告
広告
expobanner

近年、団塊の世代が2015年までに全員65歳を超えたことも影響し、日本の高齢化率は一気に高まった。2010年が23.0%、2015年が26.6%、2018年は28.1%だ。
 
国の推計によると、2025年にはいよいよ30.0%に達し、2040年には35.3%まで上昇するとみられる。介護ニーズが一段と高まる75歳以上の人口も、これから右肩上がりに増えていくという。
 
2019年版高齢社会白書 高齢化の状況
 
これに伴い、介護の給付費も急速に膨らむ見通しだ。2018年度の時点で既に10.7兆円にのぼっているが、2025年度には15.3兆円に、2040年度には25.8兆円に至ると指摘されている。この給付費を税、40歳以上の保険料、利用者の自己負担でなんとか賄っていかなければいけない。
 

高齢者の20%が2割以上

 

国は過去2度にわたって自己負担割合の見直しを断行してきた。
 
1度目は2015年度の制度改正。それまでは一律1割だったが初めて2割を導入した(2015年8月施行)。具体的には以下の条件にあてはまる利用者に2割の負担を求めることにした。
 
○ 合計所得金額(*)が年160万円以上の利用者=1人暮らしで年金収入のみの場合は280万円以上
 
合計所得金額
収入から公的年金控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除などの控除を行う前の所得金額
 
ただ例外があり、合計所得金額が年160万円以上の利用者全員が2割になったわけではない。年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身で280万円未満、夫婦で346万円未満なら引き続き1割とされた。
 
実質的な負担能力などを勘案した措置。厚労省は2割負担に該当する人の範囲について、65歳以上の高齢者のおよそ20%だと説明している。
 

 利用者の上位約3%

 

2度目の自己負担割合の見直しは2018年度の制度改正だ。2割負担の利用者のうち、一定以上の所得があり相対的に豊かな人が3割へ引き上げられた(2018年8月施行)。具体的には以下の利用者が3割負担とされている。
 
○ 合計所得金額が220万円以上で、かつ、年金収入+その他の合計所得金額が単身で340万円以上、夫婦で463万円以上の利用者=単身で年金収入のみの場合は344万円以上
 
厚労省は3割負担に該当する人の範囲について、利用者全体の概ね3%だと報告している。



 かえって重度化を招く?

 

今後の焦点となるのは、2割負担、3割負担の対象者をどこまで広げるかだ。
 
財務省は「原則2割」を主張。給付費の伸びの抑制につなげていくことや、現役世代の負担を過度に重くしないことなどを理由にあげ、段階的に実現していくべきと繰り返し訴えている。40歳から64歳の保険料の半額を出している経済界も、こうした意見を強く支持している。
 
このため、2021年度の制度改正で既存の“所得ライン”が下へずらされる可能性は高い。一部報道では、2割負担の範囲を現行の「高齢者のおよそ20%」から同25%へ拡大する案が取り沙汰されている。
 
ただ利用者サイドからの反発は必至で、与党内にも根強い慎重論がある。サービスの頻度が下がって経営がますます厳しくなる、と懸念する事業者も少なくない。
 
「介護離職ゼロに逆行する」「利用控えによる重度化を招く」。厚労省が議論を進めている社保審の部会では、そんな批判の声も噴出している。
 
厚労省は11月に具体策を公表する考え。年内には方針を決定し、来年の通常国会に介護保険法の改正案を提出する予定。政府・与党が下す最終判断は、今後の事業運営に大きな影響を与える極めて重要なものとなりそうだ。