介護保険に給付に代わる新事業を創設 厚労省案 過疎地のサービス提供を事業者に委託


厚生労働省は8日、次の2027年度の制度改正に向けた協議を重ねている審議会で、介護保険制度に中山間・人口減少地域での運用を想定した新たな事業を創設することを提案した。【Joint編集部】
地域のサービス需要が縮小し、既存の仕組みだけでは体制の維持が難しくなっている現状を踏まえた対応だ。
厚労省は会合の中で、「市町村が地域の実情に応じて、介護サービスを、給付に代わる新類型の事業として、介護保険財源を活用して実施できる仕組みを設けることが考えられないか」と説明した。
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新類型の事業は、従来の利用者ごとの出来高払いではなく、市町村がサービス提供の対価として事業者に委託費を支払う仕組み。市町村内に十分な事業所が存在しない場合は、周囲の市町村の事業所に委託すること、複数のサービス類型を組み合わせて委託することも想定されている。
利用者数の増減などに経営が左右されにくいことが特徴。事業者にとって収入の予見性が高まり、サービス提供の安定化につながる効果が期待されている。
厚労省は会合で、利用者の確保が難しい中山間・人口減少地域では単独のサービス運営が難しく、提供体制の維持に課題を抱えるケースが多いと指摘。地域で必要なサービスを確実に提供していく方策として、こうした新類型の事業の検討を位置付けた。
ディスカッションの中では委員から、「地域によっては相当な委託費を支払わないと採算がとれない。市町村の財源確保が課題」「市町村が事業者に“丸投げ”とならぬよう、モニタリングなどの枠組みが必要」「介護保険財源を用いる以上、対象地域内外に納得される仕組みが重要」といった意見があがった。
厚労省は今後、こうした声も踏まえて新類型の制度設計をめぐる議論を深める方針。