要介護認定の1次判定、妥当性を検証 厚労省 16年ぶりに調査実施へ


介護保険制度の要介護認定について、厚生労働省は1次判定の妥当性の検証を行う。【Joint編集部】
今年の年末から来年にかけて、在宅サービスのケアの時間・内容などを詳しく調査する。今年度末にも結果をまとめ、それを具体的な対応策をめぐる議論に活かす。
2日に開催した審議会(社会保障審議会・介護保険部会)でこうした方針を示した。
現時点で1次判定ロジックを見直すか否かは決めていない。要介護認定は制度の根幹。厚労省は混乱を招かないよう、丁寧に議論を深めたい考えだ。関係者は会合後も、「まずはデータを集めて精査し、審議会に報告する」との説明に終始した。
1次判定ロジックの妥当性を検証する大規模な調査が行われるのは、2009年度以来16年ぶりとなる。きっかけは昨年6月の「規制改革実施計画」の閣議決定だ。
政府はこの中で、現行の1次判定ロジックが介護施設の入所者のデータを中心に作られていることを踏まえ、在宅サービスの実態が十分に反映されていないと問題を提起した。あわせて、「認知症が深刻でも身体機能の制約が少ないと、実際の手間より軽い要介護度で認定される場合がある」との疑問も呈し、厚労省に妥当性の検証を促していた。
◆ 委員の意見分かれる
この日の審議会では、委員の意見が1次判定ロジックの見直しへの慎重論と待望論に分かれた。
全国知事会を代表する立場で参加した長崎県の担当者(大石賢吾知事の代理出席)は、「1次判定ロジックの変更は制度全体のバランスを崩すことにつながりかねない」と懸念を表明。日本看護協会の山本則子副会長は、「認定方法の見直しは、内容によっては大きな混乱をきたす可能性がある。極めて慎重かつ丁寧に検討する必要がある」と念を押した。
一方、認知症の人と家族の会の和田誠理事は、「実際の手間より軽い要介護度で認定される場合があることは、我々にとって切実な問題。認知症の在宅ケアの負担感を、より正確に反映した仕組みとすることを強く要望する」と強調。UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの染川朗会長は、「制度の公平性の観点から、今度こそ調査・検討にとどまらず具体的な対応につながるよう取り組んでほしい」と求めた。