老人ホームの「囲い込み」対策で方向性 厚労省 入居者の選択権やケアマネの独立性を重視


厚生労働省は16日、有料老人ホームのあり方を話し合う検討会でこれまでの議論を踏まえた「今後の検討の方向性」を提示した。【Joint編集部】
この中で、住宅型有料老人ホームの「囲い込み」の対策にも言及。入居者・入居希望者の選択権の保障や事業運営の透明性の向上を重視する方針を掲げた。今後、今秋の意見集約に向けて具体策を固める協議を本格化させる。
今回、厚労省は「今後の検討の方向性」として、「介護・医療サービスを提供する事業者の選択権が入居者・入居希望者にあることを確実に担保する」と説明。出来高報酬の介護・医療サービスが一体的に提供される経営モデルの透明性の向上を目指す構えをみせた。
さらに、介護・医療サービスが確実に利用者本位で提供されるようにする観点から、ケアマネジャーの独立性の担保やケアマネジメントプロセスの透明化を図る意向も示した。
意見交換の中では、住宅型有料老人ホームの事業運営の改善を具体化するよう促す声が相次いだ。
東洋大学福祉社会デザイン学部の高野龍昭教授は、「特定のケアマネジャーの利用を入居条件にすることは不適切。そのことを徹底する必要がある」と指摘。「ホームへの入居に関する契約とケアマネジメントに関する契約、あるいはケアマネジメントのプロセスが、それぞれ別立てで明示的に確保されるようにすべき」と提言した。
日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長は、「本人が希望すれば、ホームへの入居前に利用されていた居宅介護支援事業所、介護サービス事業所が引き続き利用できることを、重要事項として確実に説明することが重要ではないか」と意見した。
このほか、日本医師会の江澤和彦常任理事は、「かかりつけ医やケアマネジャーの変更を入居要件とするような運営はしっかり是正すべき」と主張。熊本大学法学部の倉田賀世教授は、「高齢者らの選択を支える適正な情報提供が重要。誇大広告の規制の法令も参考にしつつ、介護・医療サービスが外付けなのかそうでないのかが一見して分かるような表示を求め、高齢者の選択を容易にしてはどうか」と提案した。
今後の焦点は、厚労省がどこまで踏み込んだ対策を打ち出すかに移る。次回の会合では、検討会の取りまとめ案が提示される予定。高齢化の加速で有料老人ホームの社会的な重要性が一段と高まるなか、その規制や事業運営のルール、行政の指導・監督のあり方などの行方が問われている。