過疎地の介護サービスを弾力運用 厚労省、新類型の特例を創設 人員配置基準など緩和スキーム提案


厚生労働省は2027年度に控える次の制度改正で、中山間・人口減少地域を対象に介護事業所・施設の人員配置基準などの特例を新設する。9日に開催した審議会(社会保障審議会・介護保険部会)で、その制度の枠組みを提案した。【Joint編集部】
既存の「特例介護サービス(*)」を拡張し、新たな類型を創設する。国が示す一定の基準に沿って、都道府県が条例で中山間・人口減少地域の人員配置基準などを規定する。テクノロジーの活用や関係者間の連携体制を前提に、管理職や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件などを緩和できるようにする。
*「特例介護サービス」=全国一律の人員配置基準などを満たさない場合であっても、自治体が定める基準の下で保険給付を可能とする仕組み。現行では「基準該当サービス」と「離島等相当サービス」がある。地域の実情に応じてサービスを柔軟に運用できる点が特徴。
特例を新設する狙いは、人口減少で人材や利用者の確保が難しい地域でも必要なサービス提供体制を維持すること。厚労省は人材の有効活用や事業所・施設の連携、効率的な体制の整備を促し、各地域での持続可能なサービスの提供につなげたい考えだ。
どこを「中山間・人口減少地域」と位置づけるかは、介護保険事業計画の策定プロセスで自治体が協議し、最終的に都道府県が明確に特定する。国は基本指針などで一定の考え方を示し、的確な判断を促す。
特定された「中山間・人口減少地域」では、「特例介護サービス」の新類型で人員配置基準などを緩和できるほか、訪問介護の出来高報酬と包括報酬の選択制の導入も可能となる。さらに、市町村が介護サービスを「事業」として実施(事業者に委託費を支払う)する新たな仕組みを使うこともでき、地域の実情に応じた基盤維持のオプションが増える。
厚労省は今後、こうした制度の細部をめぐる議論を審議会などで深めていく方針だ。
今回の会合では委員から、人員配置基準の緩和などに伴うサービスの質の低下、職員の負担増大を防ぐ措置を十分に検討するよう求める意見が出た。また、サービス水準の地域間格差・不公平が生じたり、自治体の財政負担が過大となったりすることを懸念する声もあがった。