厚労省、就労継続支援の指導ガイドラインを新たに通知 eスポーツや麻雀など「不適切」と明示 経営の透明化も
障害福祉サービスの給付費の急増や人材確保が深刻な課題となる中で、就労継続支援については質の確保が重要となっている。今般、就労継続支援A型・B型の適切な事業運営を担保するため、厚生労働省は自治体向けのガイドラインを策定して全国に通知した。【Joint編集部】
「障害者の就労能力の向上に寄与しない事業を“就労継続支援サービス”として行っている事業者の参入があるといった指摘がある中で、事業所の新規指定や運営状況の把握・指導の際に自治体が着目すべき観点を分かりやすく整理した」
厚労省の関係者は今回のガイドラインについてこう説明した。続けて、「例えば事業者の会計の実態について、専門的な視点を必ずしも持っていない自治体ではチェックが難しい面もある。そこで、実態を把握しやすくするための『生産活動シート』を提示して活用方法を紹介するなど、自治体の実務をサポートする内容となっている」と話した。
指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて

◆ 運営のNG事例を列挙
今回のガイドラインの主眼となっているのは、悪質なサービスを提供する事業者をただすこと。不適切な運営を是正して事業所を健全化し、サービスの質を高める狙いがある。
厚労省はガイドラインの中で、就労継続支援事業所の本来の趣旨から逸脱した運営が散見されるとの見方を示し、不適切な事例を列挙して指導を促した。
具体的には、生産活動と称した「eスポーツ」や卓球教室・麻雀教室での手伝い、植物の水やりを1日数回行うだけの活動、所定の場所に居ればよいといった活動について、「公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある」と明記。利用者の就労能力の向上につながらない安易な活動実態に釘を刺した。在宅支援についても、趣旨に沿わない「自習」などは認められないとの見解を示した。
あわせて、利用者の募集方法についても厳しい目を向けている。
「1日来たら◯◯円」といった高賃金・高工賃を喧伝したり、商品券や生産活動とは無関係な電子機器の提供など金品・物品の提供を謳ったり、交通費や昼食費の一律無料などをアピールしたりして勧誘することを、不適切だと断じた。
◆ 会計の見える化へ新ツール
ガイドラインの大きな柱の1つが、ブラックボックス化しやすい経営実態の可視化だ。自治体向けの実務的なツールとして、今回新たに「生産活動シート」が開発・提供された。
これは、生産活動の内容や賃金・工賃、経営状況などを入力することで、事業所の健全性をチェックできるExcelツール。自治体は新規指定の時だけでなく、既存事業所の運営指導や監査、指定更新の際にも、このシートの提出を求めることができる。
特に重視されるのが会計の区分だ。賃金が給付費から不適切に補填されていないか、グループ企業との取引価格が不当に操作されていないかーー。こうしたポイントを押さえて確認することができるなど、不透明な資金の流れを牽制する設計となっている。
◆ 新規参入の「コンサル丸投げ」も排除
厚労省はこのほか、悪質な事業者が市場に入り込むのを未然に防ぐ観点から、新規指定のハードルも引き上げている。
ガイドラインでは、指定前の協議や面談について、コンサルタント会社や代理人だけで済ませることなく、原則として法人の代表者や事業所の管理者らを対象とするよう求めた。「知識がなくても運営可能で高収益」といった謳い文句に誘われた安易な開業に歯止めをかけるため、代表者らが制度の理念や自らの責務、事業計画などを十分に理解しているかを直接確認させる狙いがある。
また、安易な事業所の開設を他者に勧めるなどの不適切な行為をしている人がいるのを把握した場合には、地域の関係機関同士で情報を共有するとともに、厚労省や他の自治体に情報を提供することが望ましいとも記されている。
新規指定の厳格化に加え、既存の事業所の運営に対する監視も強化されることになる。制度の趣旨に沿わないサービスに対する包囲網は、今後さらに狭まっていくことになりそうだ。










