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2025年8月18日

【足立圭司】急がれる障害福祉分野の生産性向上 介護現場の知見も活かして省力化・効率化の推進を

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《 NTTデータ経営研究所・足立圭司氏 》

高齢化に伴う介護需要の増加と生産年齢人口の減少を背景として、介護分野では2018年度に、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」が策定されました。【足立圭司】

その後、テクノロジー導入のための補助制度の拡充や都道府県ごとのワンストップ窓口の設置、生産性向上推進体制加算の新設など、現在に至るまで生産性向上の取り組みが進められてきました。


介護分野と同様に、近年、障害福祉分野でも人手不足が深刻化しており、現場での生産性向上の取り組みが求められています。


障害福祉サービスの利用者数は増加の一途をたどっており、現場に従事する福祉・介護職員は2023年に約125万人に達しています。それでもなお、有効求人倍率は3.37倍(2023年)と他産業と比較して高く、障害福祉分野でも「人材確保」は喫緊の課題となっています。


今後の人口構造や労働市場の動向を踏まえると、現在の人員配置を維持したままサービスを提供することは、早晩困難になる可能性が高いでしょう。現場での生産性向上の取り組みを推進することが、今まさに不可欠となっています。

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◆ 生産性向上はあくまで手段 理念を忘れずに


こうした状況を受け、厚生労働省は今年6月に「省力化投資促進プラン(障害福祉)」を策定しました。


本プランでは、障害福祉分野の省力化・効率化を図るための具体的な方策として、介護ロボットやICTといったテクノロジーの導入、手続き負担の軽減、業務の協働化などが示されています。見守り支援機器の導入に伴う夜勤職員配置加算の要件緩和、標準様式に関する省令改正、小規模事業所の協働化モデル事業の実施などの施策も進められています。


また、同プランでは障害福祉分野の生産性向上の優良事例も紹介されています。例えば、佐賀県の社会福祉法人では、介護ロボットの導入によって身体的負担を理由とする離職が大幅に減少し、定年後も継続勤務を希望する職員が増加するなど、具体的な改善につながっています。

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このように、生産性向上に取り組む障害福祉の現場からは、業務支援ソフトの活用による記録作成や出退勤管理といった間接業務の効率化、見守り機器やICT機器などの活用による職員の負担軽減に期待する声が聞かれます。


一方で、生産性向上はあくまで手段であり、取り組みを進めるにあたっては、サービスを利用する障害のある方々の自立と社会参加の促進など、障害福祉の価値や理念を十分に考慮する必要があります。現在、厚生労働省では、障害福祉分野の「生産性向上の考え方」について整理が進められています。


さらに同プランでは、生産性向上の取り組みを進めるうえで、都道府県による事業所のサポート体制の強化についても言及し、2029年までにすべての都道府県で、生産性向上に関するワンストップ相談窓口を設置する目標が掲げられています。テクノロジーの導入や協働化への助言、アドバイザーの派遣など、都道府県がより積極的な役割を果たすことが求められます。


以上のとおり、障害福祉分野では、今後、生産性向上の取り組みが一層進められることとなっています。介護分野で培われた知見を大いに活かしつつ、生産性向上の取り組みを実際に前へ進めることで、誰もが安心して働き、質の高いサービスを継続的に提供できる現場の実現が期待されます。


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