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2025年10月6日

【村上久美子】利用者の暴力から介護職を守れ 問われる事業者の安全配慮義務 “職員ファースト”の対策を

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《 UAゼンセン日本介護クラフトユニオン・村上久美子副会長 》

昨今、介護現場で利用者からの身体的暴力によって介護従事者が死傷した、という報道をよく見かける。【村上久美子】

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◆ やりきれない現場からの報告


9月25日、大阪の有料老人ホームで職員が殺害された2021年の事件について、大阪地裁は「施設側が安全配慮義務を尽くしていれば事件は起きなかった」と判断し、遺族の請求通り約3940万円の賠償を施設に命じた。


加害者の男性利用者は以前から問題行動が多く、それが要因で退居する予定となっていた。そうした背景がある中、被害者の女性職員は1人で夜勤を行っていたという。


この時、ハラスメントが起きる可能性があると施設側が判断し、夜勤の複数人対応(男性職員を含む)をとるなどの十分な対策を講じていれば、このような最悪の事態は免れたのかもしれない。

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その判決があった数日後、私どもの組合にある女性から1本の電話が入った。前述の老人ホーム職員殺害事件の報道を見て、自身の経験について情報を共有したい、ということであった。


その女性が話してくれたのは、以前働いていた介護施設での出来事だった。


1人で3人の男性利用者の入浴介助を強制され、そのうちの1人(担当外の利用者)から介助中に暴力行為を受けた。その結果、身体障害者2級となり、左腕が動かないため日常生活もままならない状態となっている、とのことだった。


その利用者は認知症の症状があり、普段から暴力行為が多く見られていたにもかかわらず、施設側からは何の申し送りもなく、当日に急遽、入浴介助にあたるよう指示されたそうである。


利用者への適切な介護サービスの提供、事故やトラブルの防止のために、申し送りは当然に行われるべきことだが、なぜそれがなされなかったのか。申し送りができていれば、加害者に対して最初から用心して接することができ、ハラスメントは未然に防げていた可能性が高い。

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◆ 職員を守るために


この事件は、もちろん労災事故ではあるが、明らかに施設側の安全配慮義務違反が引き起こしたものである。


ここ数年で、カスタマーハラスメントについての法整備が次々となされている。2021年には介護保険法施行規則で、介護事業者に対して、利用者やその家族が加害者になるケースも含め、職場でハラスメント防止措置をとる義務が課されている。今年6月4日には、ついにカスタマーハラスメント対策法が成立。全ての事業者にカスハラ対策が義務付けられた。


介護事業者はこれらを怠ると、貴重な人材の流出に加えて法的責任を負うことになる。また、介護業界や職業に対する社会的評価が低下する、という事態を招くことにもなる。


介護現場で働く職員を守るために、事業者としてどのような対策をとるべきなのか。困難ケースにおける契約のあり方、警察などの外部機関との連携も含め、“職員ファースト”の観点から今一度真剣に考え、具体的に取り組んでいく必要がある。


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