来年度の介護報酬改定、人員欠如減算が論点に 人手不足で事業者からルール緩和を求める声
政府は21日に閣議決定した新たな総合経済対策で、来年度に介護報酬の臨時改定を行う方針を打ち出した。これを受けて、既存の「人員基準欠如減算」のあり方が焦点の1つに浮上している。【Joint編集部】
厚生労働省は21日夕、来年度の臨時改定をめぐる議論を審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で開始。介護職の賃上げ、人材の確保に向けた具体策のあり方を論点として提示したが、その一環で「人員基準欠如減算」を念頭に次のように投げかけた。
「退職者の発生から新たな人員の確保までに一定の時間がかかることなどを踏まえ、(見直しを)どう考えるか」
介護報酬の「人員基準欠如減算」は、通所系、多機能系、入所系、居住系サービスなどが対象。介護職や看護職、ケアマネジャーなどの配置数が人員基準を下回った場合に、基本報酬を原則として3割引き下げる仕組みだ。
現行のルールでは、例えば1割を超えて人員が欠如した場合、その翌月から減算が適用されるなど、猶予期間は1ヵ月から2ヵ月程度となっている。
◆「実態に合っていない」
今回の審議会では、深刻な人手不足に苦しむ事業者の立場を代表する委員などから、「人員基準欠如減算」のルールの緩和を求める声が相次いだ。
全国老人福祉施設協議会の小泉立志副会長は、「今の猶予期間で3割もの減算を適用することは、事業所の経営破綻につながりかねない。実態に合っていない」と問題を提起。「さらなる猶予期間を認めていただければ経営の安定に寄与する」と述べ、厚労省に前向きな検討を促した。
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、「現行の猶予期間はまだ人材が多かった時代に作られたルール」とし、「今の厳しい状況を考えると、3、4ヵ月程度の猶予期間が必要ではないか」と提案した。
民間介護事業推進委員会の今井準幸代表委員は、「3割減算は大きすぎる。どんなにお金を使ってでも人を入れないといけない、と事業者は大変苦労している」と実情を訴え、減算割合や猶予期間の見直しを要請した。
一方、ルールの緩和が現場の負担増に直結しかねないとして、慎重な対応を求める声もあがった。
連合の平山春樹総合政策推進局・生活福祉局長は、「採用が困難だからといって、猶予期間を安易に延長することには反対」と主張。「猶予期間が延びれば、欠員状態で働く期間が長くなって既存職員の負担が増大する。現場にしわ寄せがいく結果、さらなる退職を生む悪循環に陥る」と牽制した。
健康保険組合連合会の伊藤悦郎常務理事は、「適正なサービスの提供を担保する観点から、人員基準の緩和については慎重な検討をお願いしたい」と釘を刺した。厚労省は今後さらに議論を深め、年内を目途に施策の方向性を固める考えだ。










