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2026年1月6日

【小濱道博】新年にあたり、介護事業者に警鐘を鳴らす 胸に手を当てて考えるべきこと

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《 小濱介護経営事務所|小濱道博代表 》

◆ 新年の空気の裏で、静かに進む危機


新しい年を迎えると、どうしても「今年も何とかなるだろう」という気持ちが先に立つ。しかし、介護事業を取り巻く現実は、その楽観を静かに、しかし確実に打ち砕く方向へ進んでいる。【小濱道博】

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昨年末の厚生労働省の資料が示している数字は、どれも派手ではないが、積み重ねると極めて重い意味を持つ。


要介護(要支援)認定者数は700万人を超え、介護を必要とする人は確実に増え続けている。一方で、現場を支える介護職員数は伸び悩み、ついに減少や横ばいという局面に入った


この「高齢者は増えるが、支える人は増えない」という構図は、もはや一時的な問題ではなく、構造的な危機である。


◆ 人手不足は「採用の問題」ではなく「経営の問題」


多くの経営者は、人手不足を「採用がうまくいかない問題」と捉えがちである。しかし、資料を冷静に見ると、それは誤りであることが分かる。


ホームヘルパーは全国で50万人以上いるにもかかわらず、現場では常に足りないと言われ続けている。これは、そもそも人がいないのではなく、「辞め続けている」ということである。


賃金が低い、業務がきつい、将来が見えない ーー 。こうした理由で人が定着しない限り、どれだけ求人を出しても穴の開いたバケツに水を注ぐようなものだ。


人手不足は現場任せの問題ではなく、経営判断の結果として起きている問題であるという認識を、まず持たなければならない。

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◆ 小規模事業所が消えていく本当の理由


資料では、地域密着型通所介護や居宅介護支援の事業所が減少していることが示されている


これは「需要がなくなったから」ではない。むしろ、需要はあるが、経営として成り立たなくなっているのである。


人件費は上がり、書類や管理業務は増え、制度対応は年々複雑になる。その中で、少人数・単一サービスで回してきた事業所ほど、経営者の負担が限界を超えやすい。


一方で、訪問看護ステーションが大きく増えているのは、医療ニーズに対応でき、比較的単価が高く、人材確保でも優位に立てるからである。こうした視点も考慮して全体を判断できるかどうかで、すでに明確な差が生まれている現実がある。


◆ 特養は安泰という思い込みが最も危険


特別養護老人ホームは「待機者が多いから大丈夫」というイメージを持たれがちである。


しかし、最新の調査結果では、要介護3以上の入所申込者数が大きく減少している。在宅で待っている人も減っているという事実は、単なる偶然ではない。家族の介護力が限界に近づき、別のサービスを選ぶ人が増え、地域によっては空床リスクが現実のものとなり始めている。


今は稼働率が高いからといって、数年後も同じとは限らない。入所一本で考える経営は、静かに足元をすくわれる危険を抱えている。

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◆ 補助金と賃上げは「救い」ではなく「試験」である


国は賃上げや職場環境改善のための補助金を次々と打ち出している。一見すると、事業者を助けるための施策に見える。


しかし、その中身をよく読むと、国が何を求めているかがはっきり分かる。処遇改善加算の取得、生産性向上の取り組み、業務の見える化、役割分担の明確化 ーー 。これらができない事業所は、支援の対象から外れていく構造になっている。


つまり、補助金は救済策ではなく、「変われる事業所かどうか」を試すふるいなのである。何も変えずに補助金だけを期待する経営は、いずれ行き詰まる。


◆ DXを後回しにする経営者が直面する現実


記録や請求、勤怠管理をいまだに紙や属人的なやり方で行っている事業所は少なくない。しかし、資料が示すように、国は明確に生産性向上とデジタル化を評価軸に据え始めている。


DXは難しい、現場が嫌がる、今は忙しい ーー 。そうした理由で先送りしている間に、人は疲弊し、辞め、残った職員の負担はさらに増える。


DXは未来の話ではなく、今この瞬間の人材流出を防ぐための現実的な手段である。それを理解できない経営は、確実に競争から脱落していく。


◆ 新年に経営者が自分に突きつけるべき問い


新しい年の始まりに、経営者は自分自身に問いを投げかけるべきである。


今の経営は、「人が辞めても何とか回る」という楽観的な前提に立っていないか。制度が変わっても、その都度場当たり的に対応していないか。現場の頑張りに甘え続けていないか。


資料が示しているのは、「今すぐ倒れる」という焦眉の危機ではない。「何もしなければ確実に衰退する」という、極めて現実的な警告である。


新年を単なる区切りにするのか、経営を変える覚悟を固める機会とするのか。その選択が、数年後の事業の存続を決定づけるのである。


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