2022年7月13日

「このままでは日本の介護は持続不可能になる」 SOMPOケア、人員配置基準緩和の実証を本格化へ

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SOMPOケア・遠藤健代表取締役会長CEO

SOMPOケアは今年度、センサーやICTなど新たなテクノロジーを介護現場へ導入する効果を見極める国の実証事業に取り組む。12日に会見を開いてその概要を公表。どんな環境を作れば現行の3対1の人員配置基準を緩和できるのか、その条件作りを前へ進めたい意向を明確に打ち出した。【Joint編集部】

根っこにあるのはやはりマンパワーの問題だ。その確保は既に容易ではないが、業界横断的な厳しい競争の中で今後ますます難しさを増していく、という認識が出発点になっている。厚生労働省の推計によると、このままでは2040年の時点でおよそ69万人の介護職員が不足する見通しだ。更なる処遇改善の必要性は論をまたないものの、それだけではもはや充足に至らないという懸念が強い。

SOMPOケアの遠藤健代表取締役会長は会見で、「介護の仕事の構造改革、イノベーションを図らないといけない。職員には”人にしかできないこと”に集中してもらい、テクノロジーに委ねた方が安全で早いことは委ねていく。人員配置基準の緩和も含めて考えたらどうか」と持論を展開。「このままいくと、せっかく制度として確立している日本の介護が持続不可能になっていくことは火を見るより明らか。これは民間の事業者だけでなく特養などもみんな同じ」と語った。

実証は今月から年末までおよそ半年かけて行われていく。厚労省は得られたデータを分析し、今年度末にも結果を取りまとめて公表する。それを2024年度の介護報酬改定に向けた議論に活かす方針だ。人員配置基準の緩和は可能か、どんな条件を設ければネガティブインパクトが生じる事態を防げるか、が最大の関心事となる。

SOMPOケアは実証で、遠隔見守りやバイタル取得の睡眠センサー、自動体位変換器、介護用シャワー、再加熱カート(食事の温度調整)、とろみサーバー、記録システムなどを使う計画。ムリ、ムダ、ムラの少ない最適なケア、オペレーションの実践につなげるデータ分析システムも用いる。介護助手も置く。

モデル施設の介護付きホームでこれらをフル活用し、業務の効率化や職員の負担軽減、サービスの質の維持・向上といった観点から影響を把握する。利用者のADL、認知機能、コミュニケーション、社会参加、意欲などの変化も調べ、テクノロジーを幅広く導入することへの意見も聞く。

SOMPOケアは会見で、規制改革を希望する自治体に限って人員配置基準の緩和を認めていくことを、厚労省にアイデアとして提案したと表明。施設側が決められた条件を満たす運営をしているかチェックするため、指定権者による監査などの強化も具体化すべきとした。

SOMPOケアの担当者は、「それぞれ環境、状況、利用者像などが異なる施設に全て一律に3対1の配置を求める今の基準は、もうそろそろ見直してもいいかもしれない。それが今回の実証の論点になる」と説明。「最適な人員配置は施設ごとに違うのではないか。その点について議論を深めてもらう実証にしていきたい」と述べた。

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