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2025年5月4日

ケアマネ報酬の集合住宅減算、大幅な強化が必要 横行する“囲い込み”に歯止めを=田中紘太

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《 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー|田中紘太代表 》

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅で、介護保険サービスの“過剰提供”が横行しています。【田中紘太】

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訪問介護や訪問看護、通所介護などが上限いっぱいまで使われ、ケアマネジメントは画一的に済まされているケースも少なくありません。改めて強調させていただきますが、これは制度の持続性を脅かす深刻な問題ではないでしょうか。


本来、居宅介護支援のケアマネジャーは個別のアセスメントとケアプランに基づき、適切なサービス利用を調整する役割を担うべき立場です。


しかし、集合住宅では特定のケアマネジャーが入居者全体を一括して担当し、サービスの調整や緊急対応も施設内で完結することが珍しくありません。中には、1日で1ヵ月分のモニタリングを終えるような併設事業所もあり、「実質的に何もしていない」との声も上がっているほどです。


◆ 報酬にもっとメリハリを


こうした現実の背景に様々な事情があることは、皆さんご存知の通りです。そのうちの1つとして、居宅介護支援費の「同一建物減算」の軽さを指摘せざるを得ません。


現在は5%の報酬減算が適用されていますが、要介護3以上の利用者を多く抱えるなど経営面の合理化を図っている事業所にとって、この程度の減算では実質的なダメージになりません。むしろ高単位を維持したまま、集合住宅と“ウィンウィン”の関係を築くインセンティブになっているのではないでしょうか。


医療保険の訪問診療では、在宅と施設の点数により大きな差が設けられています。これに倣い、介護報酬にもより強いメリハリが必要だと考えます。現行の5%減算では抑制効果が乏しく、最低でも10%から15%に強化することを検討すべきです。

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◆ 優良な事業者も中にはいるが…


この問題は全国的に広がっています。例えば中山間地域では、在宅の新規利用者が少ないこともあり、居宅介護支援事業所が集合住宅に依存せざるを得ない構図も生まれています。“集合住宅プラン”を多く抱え、大規模化して上位加算を取得する事業所も少なくありません。こうした構造的なもたれ合いが、地域のサービスの質や制度の健全性を揺るがしています。


もちろん、全ての集合住宅が問題を抱えているわけではありません。中には、外部サービスの自由な選択を認め、在宅と変わらぬケアマネジメントを実践している優良な事業者もあります。そうしたまっとうな施設と、不適切な囲い込みを意図的に行っている施設とで、制度上の評価がさほど変わらない現状こそが大きな問題です。


国も様々な施策を講じていますが、実行力のある形で状況を改善するところまでは至っていません。ケアプラン点検は非常に重要ですが、集合住宅側の指示でケアマネジャーが形式的な役割にとどまっているケースが目立つのが実情です。

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◆ まっとうな事業者が評価される仕組みに


私たちケアマネジャーは、本来の理念に立ち返る必要があります。自立支援という介護保険の本旨を見失い、集合住宅という効率的な現場で不正に加担してはいけません。過剰サービスを前提とした事業運営に巻き取られず、専門職としてあくまで中立的な立場での支援を貫くべきです。


《参考》
高齢者向け住まい等における効果的なケアプラン点検推進のためのヒント


集合住宅を運営する事業者も、あらかじめ決められた偏ったケアプランの作成を指示するのをやめて頂きたい。「問題のある事業者はごく一部」という声もありますが、果たして本当にそうなのでしょうか。


制度運営を健全化するためには、報酬体系を見直すことが不可欠と言わざるを得ません。集合住宅の居宅介護支援の報酬をより厳格に調整し、まっとうなケアを実践する事業者が正当に評価される仕組みを整える必要があります。そうでないと、悪貨が良貨を駆逐する事態の加速を招きかねません。


今こそ、一部の悪質な事業者の問題と矮小化して片付けるのではなく、構造全体にメスを入れるべき時ではないでしょうか。介護保険制度の理念や信頼を守るためにも、減算の強化と実効性のある指導体制の整備を急ぐ必要があります。


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