2025年5月27日
「介護に人材が集中しても…」 財務省、介護職の賃上げへの慎重姿勢を堅持


財務省の財政制度等審議会は27日、これまでの議論をまとめた提言(建議)を政府へ提出した。【Joint編集部】
国際社会が変容して先行きの不透明さが強まったこと、日本経済が「金利のある世界」に入ったことなどを踏まえ、財政健全化の努力が欠かせないと改めて強調する内容。介護分野についても、給付費の膨張を抑制して制度の持続可能性を確保していくことに重きを置き、歳出増につながる施策への後ろ向きな姿勢を堅持した。
難しさが増している人材確保のための取り組みも例外ではない。
財務省は提言の中で、介護報酬の処遇改善加算や昨年度の補正予算で創設した補助金など、既存の施策を活用すべきと主張。業界が強く求める新しい追加的な施策については、「一律の対応ではなく、介護事業の質の向上につながるような適切なあり方を検討すべき」と慎重な構えを崩さなかった。
あわせて、「今後の生産年齢人口の減少を踏まえれば、介護分野にばかり人材が集中するのは適切でない。処遇改善のみで新たな人材を求めるのではなく、既存の人材を大切にしながら、生産性の向上や職場環境の整備などに取り組む事業者が、利用者・職員に選ばれていくことが重要」との見解も示した。
財政審の増田寛也分科会長代理は会合後の記者会見で、「社会保障は費用のボリュームが大きく、少しでも見直すと財政全体に与える影響が大きい。制度の持続可能性の確保を模索していくことに専念しなければいけない」と指摘。介護職らの賃上げの必要性は否定しなかったが、給付と負担のバランスを考慮してメリハリをつける視点が不可欠との認識を示した。