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2025年6月6日

【小濱道博】AIの活用、介護現場もいよいよ必須の時代 業務改革の中核をなす戦略的なリソースに

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《 小濱介護経営事務所|小濱道博代表 》

1,生産性向上に不可欠


個別機能訓練計画書をスマホで写真に撮り、AIアプリに読み込ませてからリハビリメニューを出すように指示すると、詳細な提案が示される。アセスメントシートを同様に読み込ませて、ケアプランの第1表、第2表の原案を提示させる。加算の算定要件や必要なプロセスを提示させる。利用者や家族への“事務所通信”の原稿を提案させる。最適な職員配置を提案させる。サービス担当者会議などを、ICレコーダーで読み込ませて、瞬時に文字起こしと議事録を作成させる。


このようなAIの使い方が、日常的に見られるようになってきた。【小濱道博】

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介護サービス業は、慢性的な人材不足による構造的課題に直面している。特に記録作成、ケアプラン策定、運営指導対応といった事務作業の負担は大きく、現場職員の本来業務である利用者支援を圧迫している。


このような状況を打破する手段として、生成AIの活用がある。ChatGPTやGemini、NotebookLMに代表されるツールを使えば、情報整理、文書作成、内容要約などを短時間で処理することができる。単なる便利ツールではなく、業務改革の中核を担う戦略的リソースとして、介護現場に不可欠な存在となりつつある。


2,一般的なChatGPTやGeminiの活用


ChatGPTやGeminiは、インターネット上に公開された膨大な情報を学習し、質問に対して柔軟に応答する汎用型生成AIである。これらのAIは、介護現場において以下のような活用が想定される。


第1に、新たなケア手法の探索、レクリエーション企画、業界トレンドの把握など、幅広い情報収集に適している。第2に、定型的な介護記録の文案作成や家族向け説明文の生成、研修スライドの下書きなど、反復的業務の効率化にも効果を発揮する。


しかし、これらのツールには固有のリスクがある。


最大の問題は「ハルシネーション」。簡単に言うと、もっともらしい嘘をつく。例えば、実在しない加算名を生成したり、制度解釈を誤った形で提示したりするケースである。


また、回答の根拠が明示されないことも多く、情報の正確性が問われる介護現場においては、信頼性の問題が生じる。さらに、個人情報の誤入力による情報漏洩リスクや、法制度に関する不正確な内容の拡散も懸念材料である。


ゆえに、これらのAIは、現時点においては「叩き台」や「補助的作業」への限定利用にとどめ、最終判断は必ず専門職が行うという原則の下で運用すべきである。

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3,NotebookLMの信頼性と活用


NotebookLMは、Googleが提供するドキュメント特化型の生成AIであり、ユーザーがアップロードした資料をもとに回答や要約を行う点が最大の特徴である。インターネット上の情報に依存せず、自施設が保有する信頼性の高い一次資料に基づいた出力を行うため、介護サービス業における活用余地は大きい。


たとえば、介護報酬改定の通知やQ&A、自治体の運営指導マニュアル、法人内マニュアルなどをNotebookLMに読み込ませておけば、「この加算の算定要件は何か」「過去の指摘事項はどこか」といった質問に、根拠を明示しながら即座に回答してくる。また、議事録の要約、社内FAQの構築、教育資料の整理、業務引き継ぎ対応など、多岐にわたる業務で活用できる点も強みである。


ただし、NotebookLMも万能ではない。アップロードされた資料の正確性に強く依存するため、内容に誤りがある場合はAIの出力にも影響が出る。また、汎用AIのような自由なアイデアの発想には不向きであり、あくまでも「既存資料を活用した整理・分析」に特化した使い方が望ましい。

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4,AIの相互活用が有効


生成AIを介護現場で活用するうえで最も重要な課題の1つが、ハルシネーションの検証と回避である。この課題に対しては、ChatGPT・Gemini・NotebookLMを相互に補完的に活用する方法が効果的である。


たとえば、ChatGPTで作成した制度解説やレクリエーション案を、NotebookLMに保存済みの厚労省通知やマニュアルと照合することで、誤情報の有無を確認することができる。逆に、NotebookLMで抽出した制度要件をChatGPTに「わかりやすく書き直す」「外国人職員向けに平易化する」ように依頼すれば、多文化対応の教育資料としても活用できる。


このように、汎用型AIの創造性とドキュメント特化型AIの正確性を組み合わせることで、それぞれの弱点を補い合い、より安全かつ効果的なAI活用が実現する。この方法は、実際かなり有効である。


ただし、相互利用した双方が嘘をつく可能性も否定できない。重要な資料の作成などでは、やはり専門職の確認は必須である。

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5,AIを味方につける運用設計を


AI活用の成否を分けるポイントは、技術そのものではなく、人間による運用設計にある。介護現場においてAIを安全かつ効果的に使うためには、以下の3点が重要である。


第1に、最終判断は必ず人間が行うという原則を徹底すること。ケアプランや制度解釈、介護報酬の算定要件に関する事項は、専門職が責任を持って確認・決定すべきである。


第2に、情報管理体制の強化が不可欠である。個人情報や機密情報は必ず匿名化し、NotebookLMはGoogle Workspace環境など、安全性が担保されたクラウド上で運用する必要がある。


第3に、用途に応じたAIの使い分けを実践することである。柔軟な発想や幅広い情報探索にはChatGPT・Geminiを、正確な制度解釈や資料の管理・共有にはNotebookLMを用いることで、両者の特性を最大限に活かすことができる。


AIによって記録業務や資料作成の時間が短縮されれば、職員は利用者との対話やケアに集中できる。これは、サービスの質の向上と職員のエンゲージメント強化を両立させるための有効な手段であり、離職防止にもつながる好循環を生む。


NotebookLMの共有機能やモバイル対応の進化によって、AIは今後さらに現場に浸透していくであろう。正しく使えば、生成AIは人手不足の解消、業務の効率化、サービスの質の向上という三位一体の目標を達成するための、心強いパートナーとなる。


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