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2025年6月12日

【足立圭司】介護現場でテクノロジーがほこりを被る理由 成功の鍵は経営層と現場の「目線合わせ」

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《 NTTデータ経営研究所・足立圭司氏 》

介護現場では近年、介護報酬の「生産性向上推進体制加算」の取得が推進されています。しかし、福祉医療機構(WAM)が昨年11月に発表した調査結果によると、特別養護老人ホーム(n=769)の生産性向上推進体制加算(Ⅱ)の算定率は18.6%で、 加算(Ⅰ)に至っては6.9%にとどまることが明らかになりました。【足立圭司】

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この加算の要件では、業務改善計画の策定や委員会の設置に加え、現場の課題の「見える化」が不可欠とされています。


しかし現場では、「課題の見える化とは具体的に何を指すのか」「日々の業務をどう整理すれば良いのか」といった戸惑いの声が少なくありません。慢性的な人員不足や多忙な業務に追われる中で、業務改善自体が新たな負担となり、その取り組みが後回しになってしまうケースも散見されます。


◆ 必然的に生じる感覚のズレ


私はこれまで、介護現場の生産性向上やテクノロジー導入・活用において、「経営層と現場の目線合わせ」が極めて重要であると繰り返し提言してきました。実際、業務改善やテクノロジー導入に対する両者の視点には違いがあることが自然です。


例えば、経営層は投資に対する費用対効果を重視し、法人・事業所全体の最適化を目指します。一方で、現場職員は「業務負担はどう軽減されるのか」「利用者へのケアの質はどのように向上するのか」など、より直接的な影響に関心を寄せます。


この視点の違いを認識しないままテクノロジーを導入すると、「操作を覚える時間がない」「かえって手間が増えた」といった不満が現場から噴出し、最悪の場合、 大きなコストをかけて導入したテクノロジーが、活用されなくなってしまう事態も起こり得ます。この背景には、「なぜそのテクノロジーを導入するのか」という真の導入目的が経営層と現場職員の間で共有されていない、という課題があります。

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◆ 生産性向上ビギナーセミナー/フォローアップセミナー


このような状況を改善するため、厚生労働省では、経営層と現場職員が共に参加し、組織的な業務改善を促すためのセミナーを実施しています


このセミナーでは、 生産性向上や介護テクノロジーの導入・活用の手順をはじめ、緩やかな因果関係図の作成といった手法を通じて、現場の課題を構造的に整理し「見える化」することを解説します。これにより、経営と現場の間に「本質的な課題は何か」「どこから着手すべきか」といった共通認識を醸成することを目指します。


例えば、「記録業務に時間がかかる」という課題の背景には、記録様式の未統一、適切なツールの未活用、あるいは関連する研修の不足など、複数の要因が複雑に絡み合っているかもしれません。こうした構造を俯瞰的に捉えることで、漠然とした課題が明確になり、改善の優先順位や目指すべき方向性が議論できるようになります。そして、「どのような職場を目指したいのか」「何に最優先で取り組むべきか」といった、本質的な議論へと進むことが可能になります。


テクノロジー導入はあくまでも手段です。その目的を共に理解し、目標を共有することが、このセミナーの大きな狙いのひとつです。


形式はオンラインで参加無料。経営層と現場職員がともに参加し、生産性向上の基本的な考え方から実践的な取り組みまでを段階的に学べます。経営層と現場スタッフが一体となって業務改善に取り組む最初の一歩として、ぜひこの機会にご参加ください。

ビギナーセミナー:生産性向上の概念や実際の進め方の理解を深めます。

フォローアップセミナー :全2回にわたり、課題の特定から具体的な解決策の立案、そして組織内での合意形成までを実践的に学びます。

両セミナーのお申し込み・詳細はこちらから


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