【柴口里則】ケアマネジャーの処遇改善に会長職を懸けて挑む あくまで年収500万円の実現に向けて


6月29日の社員総会で、日本介護支援専門員協会の5期目の会長職を拝命しました。これまで4期8年間、現場の皆様とともに協会活動を積極的に展開してきましたが、今回の任期でも「皆様の協会である」という原点をぶらさずに、引き続き前進してまいります。【柴口里則】
私はこれまで、開かれた風通しの良い組織とすること、チーム一丸となって運営することを何より大切にしてきました。協会は私個人のものでも、役員のものでもありません。全国のケアマネジャーひとりひとりの声を正しく受け止め、政策の場へ届ける。それが協会の使命であり、私の責任です。
現場の意見を丁寧に吸い上げるため、協会のシンクタンク機能やモニター制度、アンケート調査の仕組みを強化してきました。以前は「回答率が低い」と言われていたケアマネジャーへの調査も、今では多くの方々に迅速にご協力いただけるようになり、確かな手ごたえを感じています。
全国から選ばれた役員とともに、現場と国の強固な橋渡し役となる協会を、これからも全力で築いていきます。
◆「退路を断つ覚悟で」
今期で最も力を注ぎたいことは、他ならぬケアマネジャーの処遇改善です。私はこれまで、ケアマネジャーの賃上げを一貫して主張し続けてきました。
協会では今年5月から、賃上げの実現を訴えるための署名活動を実施してきましたが、全国の皆様のご協力により、7月3日時点で実に24万筆以上が集まりました。これは、私にとって非常に大きな意味を持つ成果でした。
この署名数の重みを、私は自分にのしかかる大きな責任として受け止めています。もし、この機運を有効に活かせず処遇改善を実現できなければ、私は活動を牽引する者として失格でしょう。まさに切腹物だと思います。退路を断つ覚悟で、今後の制度改正・報酬改定に臨むつもりです。
私は以前から、ケアマネジャーの平均年収を500万円に引き上げるべきと求めてきました。これは単なる思いつきではありません。
基礎資格を取得してから5年間、現場で知識と技術を磨き続けてきた専門職のケアマネジャーが、報酬面で正当に評価されないのはおかしい。介護職員が全産業平均を目指すなら、ケアマネジャーはその上でなければいけません。そんな強い思いを持って、居宅介護支援の基本報酬の引き上げや処遇改善加算の導入など、必要な施策の実施を働きかけていきます。
「本当に実現できるのか」との声があることも承知しています。ただ、社会の関心は確実に高まってきています。与野党を問わず、多くの政党がケアマネジャー不足に着目するようになり、賃上げへの賛同の声も広がってきました。もはや実現できない夢ではありません。現場の皆様の努力が報われるよう、更に力強く働きかけていきたいと思います。
◆ 自己負担の導入には反対
次の制度改正で大きな焦点となるのが、居宅介護支援に利用者の自己負担を導入することの是非です。我々は引き続き反対の立場を取ります。
日本にはまだ、相談支援にお金を支払う文化が根付いていません。ケアマネジャーだけを有料にして、広く国民の理解と納得を得るのは難しいと考えます。自己負担を導入すれば、ケアマネジャーと利用者の関係性にも影響が及ぶでしょう。公正中立なケアマネジメントの実践が、より困難になっていく懸念が拭えません。
もし、仮に導入する必要があるとしても、その実施に向けては十分な検討と準備、説明が欠かせません。3年ごとの制度改正のたびに、目先の財源の抑制を目的として議題にあげるような進め方では、制度の混乱や不信を招くだけです。
我々は今後も反対を続け、拙速な議論にも警鐘を鳴らしていきます。今後も皆様とともに、誇りある仕事としてのケアマネジメントを守り、次の世代へとつなげていけるよう、全力を尽くしてまいります。