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2025年9月17日

【大島康雄】10万人の介護離職を防ぐチェンジメーカー ワークサポートケアマネジャーの使命と展望

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《 日本介護支援専門員協会・大島康雄常任理事 》

介護と仕事の両立は、多くの会社員と企業にとって切実な課題です。その最前線で活躍し、大きな変化を静かに起こすのがワークサポートケアマネジャーです。


現場で何を行い、どんな効果を生んでいるのか。その使命と展望を分かりやすく整理します。【大島康雄】


◆ 導入の背景は?


ワークサポートケアマネジャーは、家族の介護を抱えている会社員らが仕事と介護を両立できる社会を目指し、誰もが介護をしながら意欲的に働けるようサポートする専門職です。日本介護支援専門員協会の認定資格で、現在、全国で314名が活動しています(今年3月時点)。


2000年に介護保険制度が導入され、「介護の社会化」をスローガンに脱家族化が進められてきましたが、介護人材の不足から介護・ケアを取り巻く環境は厳しい状況となっています。


核家族化が進んだ現代、家族不在の介護や老老介護、男性介護者、ダブルケア、シングル介護者など、それぞれの世帯の状況も大きく変化し、介護離職は年間10万人と言われています。


そこで、日本介護支援専門員協会としてワークサポートケアマネジャーの養成を行い、企業の支援などを通じて介護離職の予防を推進しています。


ワークサポートケアマネジャーの役割としては、以下の5つがあげられます。

1. 企業などに勤務する会社員らの介護問題に関する情報提供と相談支援


2. 契約企業などが抱える介護離職問題への側面的支援


3. 地域包括支援センターや居宅介護支援事業所など関係する社会資源の紹介・仲介


4. 社会保険労務士や産業医、かかりつけ医と連携した介護離職予防の対応


5. 介護保険制度に関するセミナー開催支援など、企業による介護離職予防の支援

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◆ 全国の取り組み事例


ワークサポートケアマネジャーが具体的に行う支援は、企業の要望や状況により様々です。社員向けの介護離職予防セミナーの開催から、既に介護の問題を抱えている社員の個別の相談支援など、必要に応じて柔軟に幅広く対応します。


例えば、北海道ではワークサポートケアマネジャーが企業と契約し、既に個別のケースも含めて相談対応を行っています。その活躍は、商工会やメディアなどに取り上げられたりもしています。


また神奈川県では、ワークサポートケアマネジャーが社会保険労務士と協働しながら、地域で介護離職を防止するための企業向けセミナーなどを展開しています。他にも、長崎県はワークサポートケアマネジャーの派遣を県の事業として位置付けており、仕事と介護の両立に向けた企業へのサポートを展開しています。


産業を維持し、無理のない労働環境を整えることで、介護離職を未然に防ぐ。それにより、家族介護者を含めたすべてのケアラーが介護のストレスを緩和し、社会とのつながりを維持できる効果が期待できます。これは個人にとっても、社会にとっても、非常に価値の大きなことではないでしょうか。


仕事をしながら介護をするワーキングケアラーへの支援は、社会的に重要な課題となっています。ワークサポートケアマネジャーは今、全国各地で企業を支え、介護離職を防止する一助となり始めています。介護ニーズがさらに拡大し、現役世代の人口が減っていく今後は、さらに幅広く活躍することが期待されています。


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