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2025年9月18日

介護福祉士国試、外国人材向け経過措置の存廃で意見二分 資格の価値・信頼と人材確保どう両立?

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《 福祉人材確保専門委|17日 》

介護福祉士の国家試験のあり方をめぐり、介護業界の意見が大きく割れている。【Joint編集部】

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焦点となっているのは、大学や専門学校に通って資格を得る「養成校ルート」の外国人材の取り扱いだ。「養成校ルート」には現在、必ずしも国家試験の合格を必須としない経過措置が適用されているが、その終了期限が来年度末に迫っている(*)。

* 養成校を卒業した人の現行の経過措置


(1)卒業後5年間は、国家試験を受験しなくても介護福祉士の資格を取得可能。
(2)6年目以降は、卒業後5年間、介護の業務に継続的に従事していれば、引き続き介護福祉士の資格を取得可能。


2026年度の卒業者(2027年3月末卒業)までが対象。

このまま廃止するか、あるいは延長するか。延長の場合は法改正が必要で、厚労省は今冬にも結論を出すべく専門委員会(福祉人材確保専門委員会)で協議を重ねている。


17日に開催された専門委の会合。厚労省は論点として、「経過措置の今後の取り扱いをどう考えるか」と投げかけたが、議論は平行線を辿った。


経過措置の廃止を訴える委員は、主に国家資格の妥当性や人材の質の担保、介護福祉士の社会的な評価の向上などにつながると主張する。一方で延長を訴える委員は、貴重な外国人材の受け入れがより難しくなること、養成校が行き詰まって学びの場が失われること(*)などを理由にあげている。

日本介護福祉士養成施設協会の報告によると、昨年度に養成校に入学した外国人留学生は過去最多の3054人。全体の46.7%を占めており、留学生をめぐる制度の動向は養成校経営の死活的な問題となっている。

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◆ 落としどころはどこか


日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長は今回の会合で、「国民の介護に対する信頼性を確保するためにも、この議論は経過措置の廃止で決着させるべき」と提言。SNSに「国家資格の意味ってなに」「必死に試験を受けて、超えてきた人たちはなに」「資格の価値が下がる」といった投稿が多くあることを紹介し、「経過措置に対する否定的な声が圧倒的多数を占めている。これだけの国民の声がある中で延長する意味合いは何か、よく考える必要がある」と釘を刺した。


続けて、連合の佐保昌一総合政策推進局長は、「介護福祉士の地位の向上・確立に向けて、経過措置は延長すべきでない。日本人、外国人に関係なく専門職として評価され、地位を高めていくことで人材確保につなげていくべき」と促した。


一方で、日本介護福祉士養成施設協会の小笠原靖治理事は、「養成校の努力で留学生は増えており、経過措置が延長されないとその芽を摘むことになる」と問題を提起。「専門職の養成・確保に支障をきたす。いつまでも延長することを良しとするわけではないが、適切な終わらせ方を考えるべき」と延長を求めた。


また、全国老人福祉施設協議会の石踊紳一郎副会長は、「外国人材は介護現場にとって非常に貴重で重要な存在。人材の質の担保に向けて要件を見直しつつ、経過措置を延長することはやむを得ないのではないか」と述べた。


厚労省は今秋に専門委の取りまとめを行い、そこから審議会で議論を詰める方針。廃止か延長か、政治的な判断も最終的な落としどころに大きく影響する見通しで、専門委の取りまとめは両論併記にとどまる可能性もある。


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