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2025年10月9日

居宅介護支援のチームづくり|総理大臣賞を受けた事業所の人材育成メソッド

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《 トライドケアマネジメント・長谷川徹代表|2025年9月撮影 》

制度への順応や業務の効率化は重要だが、それも枝葉に過ぎない。介護経営の核心は、結局のところ人を育て続ける力にこそある。【Joint編集部】

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横浜市の居宅介護支援「トライドケアマネジメント」は、働きやすい職場づくりの実践で今年度の「内閣総理大臣表彰」を受けた。その背景には、個々の職員の成長を軸に改善を続ける組織文化がある。


◆ 人の成長が、組織の力をつくる


9月上旬、まだ酷暑が和らぐ気配を見せない日に事業所を取材した。

《 居宅介護支援「トライドケアマネジメント」|2025年9月撮影 》

「トライドケアマネジメント」は2016年の創業以来、「ホスピタリティ」と「人材育成」を経営理念の2本柱として掲げてきた。約10名のケアマネジャーが在籍。地域の多様なケースを担う中で、専門性を高めながら協働する文化を育んできた。


事務職員を後方支援の専門職として位置付け、ケアマネジメントの基礎知識に触れる勉強会も定期的に実施。報酬改定や制度変更のたびに、ケアマネジャーと事務職員が一体となって学ぶ機会も設けてきた。


こうした積み重ねが、チームとしての柔軟性と学習意欲を高め、結果として安定したサービス提供の土台になっている。

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長谷川徹代表は「組織が変わるのは人が成長したとき」と語る。外部研修の導入や情報共有の仕組み化など、学びを日常に組み込む工夫を重ねてきたという。


日々の改善が自発的に生まれる文化をどう根づかせるか。試行錯誤を重ねながら、今もその最適解を探り続けている。


◆「貢献度」を見える化

《 トライドケアマネジメント・長谷川徹代表|2025年9月撮影 》

「トライドケアマネジメント」では、担当件数や加算取得などの成果主義に必ずしも偏らず、日々の行動や姿勢を含めた「貢献度評価」を導入している。


その評価項目には、相手を思いやるホスピタリティ、困難ケースへの積極的な関与、マニュアルの遵守、ケアプランの分かりやすさ、勤務態度、安全運転、自己管理なども含まれる。これらを定量化し、自己評価と客観評価を組み合わせて最終的なスコアを算出する。


「仕事への誠意や意欲、頑張りを可視化することで、個々の努力や挑戦が報われる環境をつくりたかった」。


長谷川代表はこう話す。単なる厳しい査定ではなく、成長の方向性を職員が自ら意識できるように設計している点が特徴だ。


年2回の賞与には、毎月の担当件数などの成果だけでなく、こうした貢献度も反映。評価の透明性が納得感を生み、個々の職員が次のステップを目指す風土づくりに役立っている。


◆「なりたい自分」から行動を逆算

《 居宅介護支援「トライドケアマネジメント」|2025年9月撮影 》

さらにユニークなのが、「なりたい自分アクションシート」と呼ばれる仕組みだ。


職員ひとりひとりが、自身の将来像や目標とする収入などを具体的に描き、それを短期・中長期の行動計画に落とし込む。このシートをもとに年2回の面談を行い、上司とともに進捗を確認。現在地や課題を共有し、目指す未来への道を共に歩んでいく。


職員の内発的な動機づけを促し、行動の継続性を生み出す工夫だ。長谷川代表は、「最終的なゴールが、介護の仕事や会社への貢献と全く関係ないものでも構わない」と言い切り、こう続けた。


「仕事への向き合い方の問題。やれ、頑張れ、成長しろ、と言われてしぶしぶ取り組むものではなく、自分の人生目標に結び付けて考えることが大切ではないか。職員にとって全人的に必要な支援を、会社がどこまでできるかを考えてきた」

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◆ 処遇と緊張感の両立


こうした仕組みの積み重ねは、確実に成果として表れている。


ケアマネジャーの平均年収は427万円から491万円へ上昇。「特定事業所加算」の最上位(加算Ⅰ)や「特定事業所医療介護連携加算」なども算定している。

《 トライドケアマネジメント・長谷川徹代表|2025年9月撮影 》

長谷川代表は、「地域で奮闘していたら、自然と要件を満たしていることに後から気づいた。実際に算定し始めてから、重度者への対応や医療機関との連携、看取りの支援などに力を入れるようになった」と振り返った。


一方で、こうしたハードルの高い加算の取り組みを維持し続けるためには、相応の緊張感も欠かせないという。「要件を満たせなくなれば処遇に直結する。だからこそ、チーム全員で対策を立てる」。


数字はいつしか“目標”から“責任”に変わる。そのプロセスで、現場の団結を強める好循環が形成されていく。


長谷川代表は、「加算は信頼の証でもある。その確立に向けて一丸となって取り組むことが、組織の成熟につながる」と強調した。経営的な成果を人材育成と一体で捉え、高い水準の取り組みを長く維持しようとする姿勢が、国から高く評価された理由の1つだ。


◆ 何が介護経営の中心か

《 居宅介護支援「トライドケアマネジメント」|2025年9月撮影 》

人が育つことで現場が進化する。「トライドケアマネジメント」の実践に通底する概念だ。


外側の変化やトレンドばかりを追うのではなく、内側から前進を促す文化づくりに重きを置く。「仕事の仕方を変える」「学んで教訓を得る」「成果を共有する」。こうしたサイクルが事業の安定的な継続を下支えする。


長谷川代表は言う。「介護は人の力で成り立つ仕事。だからこそ、人を育てることを経営の中心に置くべきではないか」。それがめぐりめぐって、利用者や家族、そして地域全体を支える大きな力になると信じている。


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