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2025年12月18日

【足立圭司】生産性向上の目的地を考える 今年度のフォーラムが示す取り組みの“向こう側”

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《 NTTデータ経営研究所・足立圭司氏 》

介護現場における生産性向上の機運はこの数年で着実に高まっています。介護テクノロジーの普及をはじめ、働きやすい職場づくりを後押しする公的な支援の整備がその背景にあります。【足立圭司】

そのような状況の中で、昨年度は延べ3,000人以上が視聴した「介護現場における生産性向上推進フォーラム」が、今年度も開催されます。


今年度のフォーラムでは、国の関連政策に加え、現場の実践、自治体・ワンストップ窓口による支援など、様々な視点から最新動向が共有されます。なお、筆者はこのフォーラムでパネルディスカッションのファシリテーターを務める予定です。


■ 表彰事業所が伝える道しるべ


近年、「働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰」を受けた事業所は、フォーラムをはじめとする様々なイベントでの情報発信を通じ、地域における生産性向上のさらなる普及促進に向けた重要な示唆を与えてくれます。


これらの事業所では、必ずしも大規模な改革を一気に行うのではなく、むしろ日々の業務の中にある負担や非効率を丁寧に把握し、継続できる形で改善を積み重ねてきています。こうした試行錯誤の過程は、他の事業所でも応用しやすい視点が多く、活動の方向性を検討する際の参考になります。

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■ 事業所の自立・自走に向けた伴走支援


実は表彰事業所の中には、都道府県のワンストップ窓口が提供する伴走支援を受けた事業所も少なくありません。伴走支援とは、地域で選定した事業所に対して専門的な知識を有する支援者をマッチングし、課題の分析から改善策の立案、実行、振り返りまでを一貫して支援する方法です。事業所ごとの異なる状況に応じてオーダーメイドで支援する点が特徴であり、事業所における活動の定着に向けた効果が期待されています。


伴走支援者の役割は、事業所の課題解決に向けて単に「助言すること」だけではなく、事業所が自ら改善を継続できる状態、すなわち自立・自走を促すことにあります。


フォーラムでは青森県や大分県のワンストップ窓口が、伴走支援の内容を紹介します。伴走支援者が現場の活動にどのように寄り添い、支援を進めているのか、その具体像が示される予定です。

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■ 生産性向上を通じた人材育成・組織開発に目を向ける


生産性向上の取り組みは、テクノロジーの導入や業務改善などの「手段」に注目が集まりやすい側面があります。


一方で、その成果を持続的に伸ばしていくためには、人材育成や組織開発といった組織の土台づくりが欠かせません。実際の伴走支援の現場では、次のような要素が生産性向上を長期的に支える鍵となっています。

◯ 新しい取り組みに対応するための学習の場
◯ 職員同士が対話し、改善案を共有できる環境
◯ 試行錯誤を許容する組織文化
◯ ミドル層が改善を支える体制
◯ 心理的安全性のあるチームの形成

このように、生産性向上の取り組みは、単なる業務改善にとどまらず、現場の学びや組織文化を育む契機にもなります。


今回のパネルディスカッションでは、事業所・自治体・ワンストップ窓口・伴走支援者がそれぞれの視点を持ち寄り、活動を通じて人材や組織が得た学び、さらに継続的な活動を支える組織的要件についても議論したいと考えています。皆様のご参加をお待ちしています


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