ケアマネの処遇改善加算、6月からついに創設へ 2.1%に秘めた国の本音と施策の行方=田中紘太
今月7日、国会で今年度の予算が成立しました。6月の介護報酬の臨時改定も予定通りに実施されます。私たちケアマネジャーにとって最大のトピックは、これまで長らく対象外とされてきた居宅介護支援に「処遇改善加算」が新設されることでしょう。【田中紘太】
多くの方が言われるように、この動きは業界にとって間違いなく大きな一歩です。しかし、これを単純に「ありがたいボーナス」などと捉えてはいけません。
今回の臨時改定の根底に流れる国のメッセージを読み解き、来年度の定期改定に向けた布石をどう打つか。事業者がいま取るべき行動について、私の考えを述べたいと思います。
◆ 基本報酬は頭打ちか
今回、居宅介護支援に設定された加算率は2.1%です。これは、訪問介護(最高28.7%)や通所介護(最高12.0%)などと比べると低い水準です。
現場からは「少ない」という落胆の声も聞こえてきますが、概ね想定内のスタートラインだと言えるのではないでしょうか。十分だと言うつもりは全くないですが、私は「まぁこれくらいだろう」と捉えました。
国はどう認識しているのでしょうか。
まず重要なのは経営実態調査などのデータです。直近で利益率が6%を超えていることなどを踏まえ、居宅介護支援は比較的利益が出やすい構造になりつつあると見られているのは明らかです。
また、これまでの調査・研究事業の成果などを踏まえ、「基本報酬を引き上げても事業所の利益が膨らむだけ。ケアマネジャー個人の賃上げには直結しにくい」という見方が広がっていると考えられます。
だからこそ国は、処遇改善加算という「確実に職員へ還元される仕組み」の新設へと舵を切ったわけです。限られた財源の中で、まずはあえて小さく産み、今後の改定で段階的に育てていく。これがいまの既定路線です。
一方、基本報酬のさらなる引き上げはあまり期待できないのではないか。私はそう見込んでいます。
◆ 経営の前提となったケアプー
新設された処遇改善加算を取得するための特例要件として、「ケアプランデータ連携システム」の利用が組み込まれました。
これまで普及が進まなかったケアプーですが、補助金や処遇改善加算とひも付けられた途端、導入に踏み切る事業所が急増しています。インセンティブの効果はまさに絶大です。
現場からは操作性などケアプーへの不満の声も上がっていますが、それは本質的な問題ではありません。事業所の体制を整えてしっかり向き合えば、運用は決して難しくないのが実情です。
経営的な観点から言えば、いまケアプーを十分に利用しようとしない、処遇改善加算の取得に後ろ向きな姿勢をとるという選択はあり得ません。競合他社はみな処遇改善加算を取得してケアマネジャーの賃上げを進めますから、確実に人材流出を招くことになるでしょう。
◆ 要件の厳格化に備えよ
今回は初年度ということもあり、処遇改善加算の取得のハードルは低く設定されました。ただし、いまの状況は長く続かないでしょう。来年度の定期改定では、ほぼ確実に要件が厳格化されると考えられます。
いまのうちから覚悟を持つべきです。いずれは居宅介護支援にも、訪問介護や通所介護といった先行するサービスと同じ様に、キャリアパス要件や職場環境等要件が本格的に適用されていくでしょう。
要件が増えるということは、それに伴い加算率が引き上げられる可能性が高いということです。面倒な事務作業が増えると嘆くのではなく、「要件さえ満たせば職員に報いることができる」とポジティブに捉えたいところです。生産性の向上や職場環境の改善など、いまから盤石な社内体制を築いておくことをお勧めします。
◆ 逓減制の行方は?
最後に、ケアマネジャーの担当件数の上限(逓減制)についても触れておきます。
業界内では、逓減制の一層の緩和を求める声が根強いのが実情です。私自身も、ケアマネジメントの質を担保する観点から一定の規制は必要だと思うものの、緩和という方向性自体には賛成です。
しかし、これまでの調査・研究事業の成果などを見ると、ケアマネジャーの平均の担当件数は増加していません。固定給でインセンティブが働かない事業所などで、ケアマネジャーが自ら件数を増やす動機が生まれにくいという事情もあるでしょう。
来年度の定期改定で逓減制がどこまで緩和されるかは、依然として不透明です。ただ私は、やがて緩和されていくことを念頭に置いて、いまから事業所の体制づくりを進めようと考えています。
慢性的な人材不足に加え、国の財政状況にも十分な余裕がない…。我々を取り巻く事業環境が、ある日突然、劇的に好転するような魔法は存在しません。
だからこそ、事業者は制度改正・報酬改定の意図を冷静に読み解き、目の前の課題を着実にクリアしていく必要があります。賃金や働く環境など、職員の処遇を継続的に改善していくことこそが、これからの厳しい時代を生き抜く条件です。
まずは、ケアプーを社内でしっかりと使いこなすことが第一歩。2028年度からは、ケアプーも統合される「介護情報基盤」の運用が全ての自治体で始まります。こうした動きはきっと、地域のケアマネジメントの基盤、介護サービス提供体制を維持することにもつながると信じて、私も取り組みに一段と力を入れていきます。








