2022年8月23日

【解説】介護支援専門員の法定研修どう変わる? 抑えておきたい見直しの重要ポイント=石山麗子

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国際医療福祉大学大学院・石山麗子教授

4月以降の介護保険最新情報では、介護支援専門員にとって重要な事務連絡が立て続けに発出されました。例えば発出順で、仕事と介護の両立支援カリキュラム策定展開事業の実施結果(Vol.1068)、多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル(Vol.1070)、介護支援専門員の法定研修のカリキュラムやガイドライン(Vol.1073)、適切なケアマネジメント手法関連(Vol.1079Vol.1088)などです。【石山麗子】

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これらは何の関係もないように見えますが、実はすべて介護支援専門員の法定研修に含まれるテーマです。筆者は偶然にも、これらすべての事業の一連のプロセスに関わらせて頂きました。


そこで今回は、次期介護支援専門員法定研修がどのような切り口で改定される見込みなのか、筆者の見解から解説致します。


カリキュラム見直しのポイントについて、報告書(注1)には次のように書かれています。


「幅広い視点で生活全体を捉え、生活の将来予測や各職種の視点・知見に基づいた根拠のある支援の組み立てを行うことが介護支援専門員に求められていることを踏まえ、そのような社会的要請に対応できる知識や技術を修得できるように科目の構成を見直す」


文中に注目すべき3つの単語があります。「生活の将来予測」「根拠」「社会的要請」です。


生活の将来予測のルーツは、2016年に検討が始まった適切なケアマネジメント手法にあります。開発過程では多岐にわたる議論が展開されました。ケアマネジャーが行う予測とはどういうものか検討され、この結果を受けて厚生労働省では、2018年度以降の社会保障審議会などの資料でも、「生活の将来予測」を使用するようになりました。


以前使用されていたのは「予後予測」です。このような用語変更には、多職種連携が推進されるなか、ケアマネジャーは医療とも連携しながら、利用者の身体をはじめその他多くのことを包含し、生活全体を俯瞰して将来を予測する高度な専門性を有する職種だ! と宣言せんばかりの覚悟が伝わってきます。


生活の将来予測は、単に業務経験年数を積めば行えるわけではありません。根拠に裏打ちされた知識や技術の修得が前提です。昨今、ケアマネジャーには、本人支援はもとより、「仕事と介護の両立支援」や「ヤングケアラー」など、世帯全体のバランスへの配慮も社会的要請となっています。介護保険法に位置付けられているケアマネジャーが、本人に紐づく他法ではなく、家族に紐づく他法に関与するには、その法制度の理解、他制度と自らの制度的関係や責任、関係機関の特徴や連携方法などの知識を備える必要があります。


次に着目するのは「根拠」です。2021年度は科学的介護の確立を目指し、「LIFE(科学的介護情報システム)」の活用も始まり、エビデンスベースのケアへと舵がきられました。


では、ケアマネジメントを行う際の根拠とはなんでしょうか。


利用者へのケアマネジメント実践でも後進育成でも、自分の経験だけをもって根拠と考えるのは望ましくありません。ケアマネジャーには、共通言語と共通知識が求められる時代となりました。


それを助けるのが適切なケアマネジメント手法です。適切なケアマネジメント手法は、ケアマネジャーの実践知を共有知へと整理したものです。この手法は、法定研修の5課程のうち、4課程に導入される見込みです。まさにこれからの介護保険のケアマネジメントにおける共通言語と共通知識になっていくでしょう。


もう1つ見落せないものがあります。倫理です。科学的介護の推進は素晴らしいものですが、人は、科学さえあれば幸せになれるというものでもありません。ケアマネジャーには、科学も活用しながら、利用者の価値観や意思を尊重し、その実現に貢献することが期待されています。


また、認知症の方、ターミナルケアを必要とする方が増えるなかで、ケアマネジャーは一層、専門職としての行動規範が社会から問われます。専門職のすべての活動の礎となる倫理は、法定研修5課程のうちすべてに充足される見込みです。 


文献一覧:
注1)日本総合研究所、令和3年度厚生労働省老人保健事業推進補助金、介護支援専門員の資質向上に資する研修のあり方に関する調査研究事業報告書、p22

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