2023年5月24日

みんなを支える「子ども食堂」 介護事業所が取り組むからこそ生まれる地域の好循環

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《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

「子ども食堂」という言葉には、何か特別な響きがある。子供たちが美味しいご飯をもりもり食べてにっこりと笑う − 。そんな姿が頭に浮かび、心がほっこりと温かくなる。【Joint編集部】

全国的に取り組みが進んで認知度が上がった理由は、もちろんそれだけではない。「子ども食堂」の意義の大きさ、幅広さを、社会活動家の湯浅誠氏が理事長を務めるNPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」は次のように説明している

引用
「地域食堂」「みんな食堂」という名称のところもある。包括的に社会課題にアプローチし、健全な地域づくりを行うことができる。

介護事業者の中で取り組みを始めるところが出てきたことも、ごく自然な流れなのかもしれない。地域づくりは高齢者を支えるうえで極めて重要な視点で、行政が現場に期待していることでもある。

《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

関東を中心に在宅サービスなどを展開する株式会社ウェルフューチャーは、東京都や神奈川県、愛知県などで既に運営に乗り出している。


その名も「SouZoo(ソウゾー)食堂」。想う、寄り添う、創り出すといった想いを込めたほか、動物園(Zoo)のように多様で、個性が尊重される楽しい場所にしていきたい、というコンセプトもあるという。


4月半ばの土曜日、東京都町田市で実際に開催されると聞いて現地へ伺った。どのように運営しているのだろうか。


◆ メニューは“ガチャ”で決定

《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

当日はあいにくの雨だったが、子ども、親子、学生、高齢者など幅広い年齢層の人たちが“開店”とともに続々と集まってきた。


ここは「桜美林ガーデンヒルズ」。サービス付き高齢者向け住宅や学生寮に訪問介護、通所介護、居宅介護支援、カフェなどが併設されたいわゆる「CCRC(*)」だ。「SouZoo食堂」はその一角に整備された公共スペースで開催されている。

《 晴れた日の桜美林ガーデンヒルズ|ウェルフューチャー提供 》

*「CCRC」=高齢者が健康なうちに移り住み、やがて要介護状態になっても継続的にケアを受けながら住み続けられる複合施設。地域コミュニティに参加しやすい、多世代と交流する機会を得やすいなど、心身の健康をできるだけ長く保てる環境が重視されている。「桜美林ガーデンヒルズ」は国内初の「学園連携型CCRC」として知られる。


この日は4種類のカレーが用意されていた。レシピは全て地域の高齢者らが提案したもの。どれも王道の作り方にひと工夫、ふた工夫を加えてあり、食欲をそそる香りを放っている。このほか、地域住民が提供してくれる食材を活用したレシピにすることもあるという。

《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

ウェルフューチャーは注文の仕方にも遊び心を持たせることにした。いわゆる「ガチャガチャ」を回して出てきたメニューを食べてもらう、という決まりだ。子どもが楽しめるようにするアイデアだが、学生や高齢者らの表情からも自然と笑顔がこぼれていた。

《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

運営を担うマネージャーの斎藤佑介さんは、「皆さんに喜んで頂けていると思います。子ども達だけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に来てくれたりする子も多いですし、良い雰囲気を作れていると感じます」と自信をのぞかせた。


また部長の下田実さんは、「最初はバタバタしましたが、今は落ち着いて運営できるようになっています。少しずつ知名度も上がり、市役所の方、地域の方にもご協力頂けるようになりました。今後も地域と連携して動いていきたいです」と話す。

《 左:斎藤佑介さん|右:下田実さん 》

運営を始めた頃の失敗談を聞くと、下田さんは「せっかく来て頂いた方々にお腹いっぱい食べてほしくて“食べ放題”にしたら、開店30分でご飯がなくなり“ルー飲み放題食堂”になってしまいました…。『カレーは飲み物』ではありますが、さすがに運動部の学生相手に“食べ放題”は判断を間違えました笑」と振り返った。今は「毎日でも開催できるようになりたい」とより高い目標を掲げている。


◆ 通所介護の利用者がコミット


料金は大人も含めて全て無料。今は赤字での運営となっているが、将来的には無料のままで“収支トントン”へ持っていくことを目指しているという。

《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

模索しているアプローチはいくつもある。いわゆる「食品ロス」の削減を図る団体から食材をもらうのも、その一例と言えるだろう。ここで焦点を当てたいのは、ウェルフューチャーがデイサービスとの有機的な連携を柱に位置付けていることだ。


それは効率的なマンパワーの確保、ということだけではない。例えば安全面に配慮しつつ、通所介護のレクの一環として利用者に野菜を切ったり皮を向いたりする役割を担ってもらい、コストの圧縮につなげている。自分が仕込んだ野菜を食べている子どもを見た利用者は、やりがいや充実感を抱いてくれるという。

《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

もう1つが、利用者に同じくレクの一環として有償の仕事をしてもらう取り組みと接続し、より良いサイクルを作り出すことだ。


ウェルフューチャーはこれまで、希望者が事業所で軽作業などに従事して一定の報酬を得られるスキームを作ってきており、これを「働レク(ワクレク)」と呼んでいる。利用者の自立支援・重度化防止につなげる仕掛けの1つだが、その報酬の一部を「SouZoo食堂」に寄付できるようにした。

《 株式会社ウェルフューチャー「SouZoo食堂」》

仕事は第一義的に自分や自分の愛する人のためにするもの、かもしれない。ただ、それが少しでも近所の子どものため、地域のためにも役に立っていると感じられれば、高齢者にとって社会経済活動に関与する喜び、生きがいがより大きくなるのではないか − 。ウェルフューチャーは今後、こうした世代を超えた互恵的な地域づくりの循環を更に発展させていきたいという。

《 株式会社ウェルフューチャー|中村暢孝代表取締役 》

代表取締役の中村暢孝さんは、介護事業者が「子ども食堂」を運営する意義について、「介護は自分が当事者にならないと大切さが見えにくい仕事。こうした取り組みでお子さん、親御さんに思いを知って頂ければ、介護事業所はもっと地域に溶け込んでいけるのではないか」と説明。「介護事業所は要介護の高齢者を支えることに加えて、地域をつなぐプラットフォームビルダーにもなれるはず。『SouZoo食堂』がその入口になったらすごくいいなと思っています」と語った。


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