【七種秀樹】ケアマネジャーの処遇改善、もう待ったなし! やりがいとカスハラの調査から見えた課題と展望


日本介護支援専門員協会のシンクタンク部門では昨年度、介護支援専門員の仕事のやりがいとカスタマーハラスメントをテーマに調査を実施しました。その結果は、今年4月に当協会のホームページで公表しています。【七種秀樹】
《訂正》この記事では配信当初、「その結果は、今年7月に当協会のホームページで公表しています」と記載していましたが、正しくは「今年4月に」でした。お詫びして訂正いたします。この記事は訂正後の記事です。(訂正|6月26日15:15)
この調査は、昨年11月から12月にかけて、当協会会員の介護支援専門員1935名を対象にオンラインで行い、1293名(有効回答率66.8%)から回答を得ました。社会調査としても高水準の有効回答率であり、調査の質や信頼性の高さが評価されています。
当協会ではこれまで、2022年度に「介護支援専門員の業務の実態」、2023年度に「介護支援専門員の人材確保」をテーマとして、賃金や労働環境などの実態を探る調査を実施し、それぞれ報告書をまとめ、調査結果に基づく提言を行ってきました。昨年度の調査は、こうした現場の課題に改めて焦点を当てることに加えて、介護支援専門員の仕事の魅力を引き出す視点も重視したものです。
◆ 見えたやりがいの実感と課題
やりがいに関する調査結果では、仕事をするうえでやりがいの向上に影響する事項として、最も多くの介護支援専門員が「利用者の在宅生活が継続できている等のケアマネジメントの成果が実感できること」をあげました。次いで、「他の専門職や事業所等と信頼関係を構築できること」が続き、専門職としての意識の高さがうかがえます。
やりがいに関わる事項への満足度をみても、業務内容そのものに比較的高い満足度が示されました。しかし、「仕事と私生活の両立」や「給与や福利厚生等の安心して生活できる労働条件」に対する満足度は低く、賃金や労働環境の改善が人材確保の重要課題であることが改めて裏付けられました。
カスタマーハラスメントに関する調査では、過去1年間に被害を経験した介護支援専門員が37.7%にのぼり、その深刻さが浮き彫りになりました。このうち、解決に至ったのは29.0%にとどまっています。
カスタマーハラスメントは、事業所単独で対応することが非常に困難なケースがあることも否めません。このため当協会では、制度や地域全体が直面している課題だと位置付けたうえで、関係者が連携して取り組む必要があると提言しています。今後、各地域で体制を整備していき、こうした対策を更に展開していくことが重要になるのではないでしょうか。
◆ カスハラをする利用者はごく一部
ただし、誤解していただきたくないこともあります。直近半年間の被害件数をみると、91.7%の方が「1~3件」と回答していたのです。
つまり、カスタマーハラスメントを行う利用者・家族はごく一部に限られるということです。多くの利用者・家族と介護支援専門員の関係は良好であり、「介護支援専門員が常にカスタマーハラスメントにさらされている」といった風評は、人材確保の観点からも望ましくありません。
厳正かつ論理的な対応を検討することとあわせて、より冷静で客観的な議論も求められると考えています。
今回の調査結果は多くのメディアに取りあげられ、介護支援専門員の課題が社会的に注目される契機となりました。当協会の調査・提言は今後も継続し、社会保障審議会などの公的会議において、介護支援専門員の声をデータに基づいて届けていくつもりです。
改めて強調しますが、介護支援専門員の処遇改善はもう待ったなしの課題です。この必要性を広く国民に認識してもらい、大きなムーブメントを起こし、必ずその実現につなげていきたいと考えています。