wiseman-2025.9-sp01-banner01
2025年9月20日

【壷内令子】ケアマネジャー更新制の廃止を 資格の維持と研修の分離を考える

このエントリーをはてなブックマークに追加
《 株式会社ウェルネス香川・壷内令子代表取締役 》

今回は、ケアマネジャーの更新研修について、現場で働く一人としての私見をお伝えしたいと思います。結論から言えば、「資格の更新制」と「更新研修」は分けて考えるべきではないか、というのが私の考えです。現行のように、研修を受けなければ資格が失効する仕組みは、すでに限界を迎えているのではないでしょうか。【壷内令子】

ricoh-2025.9-sp02-banner01

◆ 研修と業務の両立の難しさ


この夏、私は主任介護支援専門員の更新研修を受講しました。1〜2ヵ月にわたり、eラーニングでの学習に加え、事例の読み込みや課題の提出、さらに数日間にわたる演習授業への参加と、研修にかかりきりになりました。演習授業の最中には、緊急の連絡が入っても電話に出られない場面もありました。


40件を超える担当ケースを抱えながら研修をこなすケアマネジャーにとって、その負担は計り知れません。日々の業務と研修を両立させることは決して容易ではなく、実際には非常に大変だと改めて実感しました。体調がすぐれなくても、“休んではいけない”という思いから、無理を重ねて出席せざるを得ない状況もあるでしょう。


結果として、「なんとかこなすこと」が優先になり、研修そのものに集中できないことも起きてしまいます。たとえ5年に1度であったとしても、現場の実感としては大きな重圧となっているのです。きっと、同じような思いを経験された方も少なくないのではないでしょうか。


今回、共に受講した仲間からは「次の更新はもうしない」という声も聞かれました。私自身も正直、同じ思いを抱きました。現場の年齢構成を踏まえると、更新制が“辞めるきっかけ”になっていると言わざるを得ません。

welmo-article-2025.9-lead-sp-banner01

◆ 研修は不可欠、仕組みは再考を


誤解のないように強調しますが、更新研修そのものの価値は揺るぎません。専門職として学び続けることは、利用者・家族・地域に確かな利益をもたらします。ここに一点の揺らぎもありません。


しかし、人材確保や離職防止を考えると、資格の更新制と更新研修を分けて考える道もあるのではないかと思います。研修を受けなければ資格が失効してしまう仕組みは、現場にとって大きな負担です。研修の継続は、もう少し柔軟な方法で支えていくことが望ましいのではないでしょうか。


現在、国は更新研修のオンデマンド化を進めています。これは現場にとって非常に有効な方向性だと感じます。負担を軽減し、余裕を持って受講でき、さらに各人のペースに合わせられる仕組みは、ケアマネジャーにとって大きな支えになるでしょう。こうした取り組みが広がっていけば、研修の質と量の両方を確実に底上げしていくことにつながると期待しています。


◆ 研修をどう支えていくか


一方で、更新制を廃止すれば、研修を一切受けない人が増えるのではないか、という懸念が生じます。ここへの対応こそが大きな課題です。


あくまで私の考えになりますが、個々のケアマネジャーに任せるのではなく、事業者が計画的に研修を支える仕組みを整えることが望ましいと思います。


たとえば、居宅介護支援の運営基準の中に、「ケアマネジャーに計画的・定期的に法定研修を受講させること」を位置づけ、事業者の責務としてルール化する方法も考えられます。いずれにせよ、資格の更新制と更新研修を切り離しながらも、それぞれの学びを継続して支えていく工夫が必要だと感じています。

welmo-2025.9-vol.2-lead-sp-banner01

◆ 潜在ケアマネジャー復職の追い風に


更新制の廃止は、潜在ケアマネジャーの復職促進にも一定の効果が見込めます。潜在ケアマネジャーには、業務の厳しさを理解しているからこそ最初から現場に出なかった人、過重な負担のために現場を離れざるを得なかった人の両方が含まれます。つまり、潜在化にはそれなりの理由があるのです。


この前提を踏まえれば、業務負担や処遇が改善されない限り、復職の呼びかけは実効性を持ちません。大変さが変わらないのに戻ってくるはずがない。これが現実ではないでしょうか。


その一方で、更新制の廃止は“戻りやすさ”を高めるアピールポイントになります。復職の壁となっている要因のひとつを確実に取り除く効果があり、人材確保の総合策にもつながると考えます。


◆ 資格の維持と研修の分離を


更新研修は重要です。しかし、受講しなければ資格が失効する更新制は、現場の厳しい実態やケアマネジャーの年齢構成を踏まえると、廃止を検討すべき段階に来ていると感じます。


研修の質を高めつつ、ケアマネジャーが無理なく働き続けられる仕組みへ。資格の維持と研修の継続は分けて考え、現場で実際に活かせるルールへと再設計していく時期だと感じています。


ricoh-2025.9-pc-side01-banner01
Access Ranking
人気記事
介護ニュースJoint