【田中紘太】居宅介護支援、基本報酬引き下げの最悪のシナリオ 2027年度改定の激変に備えるために
今年度の補正予算による補助金の支給、そして来年度の臨時改定による「処遇改善加算」の創設 −− 。昨年末から今年にかけて、居宅介護支援の関係者にとっては追い風となるニュースが続きました。【田中紘太】
これらは確かに歓迎すべき動きですが、あくまでも一時的な措置に過ぎません。今、我々が本当に意識すべきは2027年度の報酬改定。ここで居宅介護支援の経営環境は大きく変わる可能性があります。
前回の報酬改定はよかったから次回もきっと…。そうした甘い見通しは捨て、厳しい内容となることも想定して今から備えておくべきだと考えます。
※ 住宅型有料老人ホームの入居者に特化したケアマネジメントの新類型の創設が及ぼす影響については、前回のコラムをご覧ください。
◆ 政策転換の兆し
まず強調したいことは、これから基本報酬の水準がどちらへ向かうかまったく分からないということです。
昨年度の国の調査で重い結果が報告されています。2024年度の報酬改定を踏まえてケアマネジャーの処遇改善について聞くと、居宅介護支援事業所の52.7%が「行っていない」と回答したのです。
基本報酬の引き上げはケアマネジャーの賃上げに直結しない −− 。そのことが改めて浮き彫りになった格好です。
こうしたデータもあってか、国は来年度の臨時改定で居宅介護支援にも「処遇改善加算」を導入する道を選びました。もちろんこれは朗報ですが、「事業所の基本報酬とケアマネジャーの処遇改善が初めて切り離された」と捉えることもできるでしょう。
今後は他のサービスと同様に、優先度の高い賃上げは「処遇改善加算」の拡充で対応されていく一方で、基本報酬はなかなか上がらないという展開になる可能性もあります。さらに言うと、私は2027年度に基本報酬が引き下げられることもあり得るとみています。
◆ 見え隠れするマイナス改定の影
私が基本報酬の引き下げを懸念する根拠は、直近のデータにあります。
厚生労働省が公表した今年度の「経営概況調査」の結果を見てください。居宅介護支援の昨年度決算の利益率は6.2%。かなりの高水準となっています。
2023年度の調査で既に4.9%と高かった利益率が、足元でさらに上昇しているのです。長年「赤字部門」と言われてきた居宅介護支援が、あくまで数字上は全サービス平均を上回る高収益の事業になっていると言えます。
おそらく財政当局などはこの数字を使うでしょう。「居宅介護支援は十分に儲かっている」「基本報酬を引き下げる余地がある」と強く主張してくる恐れが拭えません。
しかし、こうした議論が現場の本質を正確に射抜いているかといえば、それは甚だ疑問だと言わざるを得ません。なぜかというと、まったく異なる2つのビジネスモデルを一括りにした平均値しか見ていないからです。
皆さんご存知の通り、住宅型有料老人ホームなどの入居者に特化した事業所と、戸別訪問で地域に点在する高齢者宅を回っている事業所とでは、収益性や業務負担がまったく異なります。高い利益率はこれらをまとめた数字で、高収益を生み出しやすい「ホーム特化」の事業所が全体を押し上げているとみられます。
このまま平均値のみで報酬が決められてしまえば、地域の高齢者を支えている真面目な事業所がより厳しい状況に追い込まれかねません。
◆ 地域の灯を消さないために
事業者の撤退や倒産件数の増加など、厳しい状況にある訪問介護と同じ失敗をしてはいけません。
今月16日に開催された国の審議会では、来年度に行う「経営実態調査」の実施案が示されました。その中では訪問介護について、集合住宅への訪問と一般的な戸別訪問とを分けて記入する欄を設けるなど、実態をより正確に把握する方針が打ち出されています。
居宅介護支援でも同様の対応が必要ではないでしょうか。国は来年度の調査で、異なるビジネスモデルの居宅介護支援事業所をしっかり分けて経営状況を把握すべきです。
技術的な限界はあろうかと思いますが、できることもあるはずです。献身的に地域を支えている事業所を追いやる報酬改定になれば、地域のサービス提供体制の崩壊を招くことになるでしょう。
もちろん、我々ひとりひとりのケアマネジャーにもやるべきことがあります。今年度の補助金などの要件となった「ケアプランデータ連携システム」の導入は必須。生産性向上や業務改善なども不可欠で、それぞれのペースでひとつずつ進めていかなければいけません。
2027年度の激変に備え、よりしなやかで足腰の強い体制を築くことが重要です。今後も地域の高齢者を支えていくために、この正念場を皆で共に乗り越えていきましょう。









