【結城康博】安易な人員配置基準の緩和は介護現場を疲弊させる 国はICT化を買いかぶっていないか?
2月26日、政府の「規制改革推進会議」が中間答申をまとめた。その中には、今後の介護現場に大きな影響をもたらすかもしれない提言が含まれている。【結城康博】
周知のように、厚生労働省は昨年末、人手不足が深刻な中山間・人口減少地域を対象として、ICTの活用も前提に事業所・施設の人員配置基準の緩和などを認める「特例介護サービス」の新類型を創設することを決めた。
これを踏まえ、「規制改革推進会議」は今回の中間答申でさらに踏み込んだ。都市部での適用も視野に、「特例介護サービス」の新類型の対象を中山間・人口減少地域に「過度に限定しないこと」を要請した。
こうした人員配置基準の緩和推進に警鐘を鳴らしたい。いくらICTの活用などが前提であったとしても、介護現場に一層の負担を強いる結果を招きかねない。国の考え方は間違っているのではないだろうか。
◆ 中山間地域でもありえない
そもそも、人手不足が深刻な中山間・人口減少地域に限った措置だとしても、安易な人員配置基準の緩和推進は評価できない。
現状で既に、限られた介護職員には現場を守る重い負担がのしかかっている。そこで人員配置基準が緩和されてしまえば、必然的に起きるのは労働環境の悪化だ。既存の介護職員の疲弊につながり、人手不足に拍車をかける結果となるに違いない。
想定される事態の1つは、高年齢層のベテラン職員が退職してしまうことだ。特に、中山間・人口減少地域のホームヘルパーやケアマネジャーらは60歳以上も多く、常に引退の時期を模索している状況にある。安易な人員配置基準の緩和推進が負担増を招き、こうした層の離職・引退を加速させる懸念が強い。
◆ ICT化を買いかぶっている
国は「生産性の向上」を掲げ、ICTの活用などを通じた人員配置基準の緩和推進に向かおうとしている。しかし、現在の介護現場におけるテクノロジーの活用は、業務負担の「軽減」には一定の効果を発揮しているものの、人の業務を「代替」できるほどの段階には至っていない。
たしかに、ファミリーレストランなどの飲食業界では、ロボットが配膳を担って店員の代替を果たしている例もある。
しかし、介護の仕事は依然として人でしか対応できない側面が強く、なかなか代わりはきかない。仮に1人でも欠員が出れば、介護施設などでは人員配置基準を遵守するためのシフト管理が困難となり、結果として既存の介護職員の負担が増大することになる。
そのため、安易な人員配置基準の緩和推進は、中山間・人口減少地域であっても大都市部であっても回避すべきだ。現行の人員配置基準を維持することが、利用者や既存の介護職員を守ることにつながる。人手不足でどうしても考えなければならないのであれば、百歩譲って管理者の「兼務要件」の緩和までである。
国は今、人手不足によって介護サービスの提供が滞ると考え、人員配置基準の緩和推進に傾いている。しかし、これには既存の介護職員の離職を促進させてしまう「罠」がある。この点を十分に認識するべきではないだろうか。
◆ 中山間地域の地域区分を1級地に
本来なら、安易な人員配置基準の緩和推進に走る前に、まずは中山間・人口減少地域の地域区分を1級地として、十分な財配分を実施すべきであろう。
現行の地域区分は、都市部に配慮するだけで中山間・人口減少地域の高コストを考慮していない。中山間・人口減少地域には大都市部と同様の財配分を実施すべきであり、地域区分の考え方を抜本的に見直すべきと考える。当然、「規制改革推進会議」が提唱している大都市部で人員配置基準の緩和推進を図る案も阻止されるべきである。
労働市場において介護業界が劣勢に立たされないためには、現行の人員配置基準のもとで介護職員が集まるような賃金体系の構築と、それを裏付ける十分な予算措置が不可欠である。
折しも国会では、2027年度の介護保険制度改正に向けた議論が始まろうとしている。介護業界も、現場が抱える「負担」の実態を粘り強く訴えていく必要がある。










