【天野尊明】介護職員の「1.9万円賃上げ」は本当か? 2027年度の報酬改定の議論、まもなく本格化へ
◆ 評判の悪い生産性向上加算
新年度に介護報酬の期中改定が行われることとなり、すでに6月以降分も含めて処遇改善計画書の提出を済ませたという施設・事業所も多いのではないかと思います。【天野尊明】
ご存じのように今回の期中改定は、処遇改善加算の加算率の引き上げと上乗せ区分(Ⅰロ及びⅡロ)の新設により、「最大月1.9万円の賃上げ(定期昇給0.2万円込み)が実現する措置」を謳うものとなりました。
しかし現在、6月から拡充される処遇改善加算が、果たしてどの程度算定されるのかを懸念する声があちこちから聞こえています。
言うまでもなく、今回の上乗せ区分は生産性向上推進体制加算(生産性向上加算)の取得か、ケアプランデータ連携システムの利用が主たる要件となっています。
特に生産性向上加算については評判が悪く、厚生労働省の調査結果では、昨年8月時点の算定率(全体)が加算Ⅰ(100単位)で2.7%、加算Ⅱ(10単位)でも22.1%に留まったと報告されています。
それなりの設備投資やデータ提出などの手間がかかる加算Ⅰが算定されないことは分からなくもないのですが、比較的カジュアルな加算Ⅱがここまで進まないというのは、やはり同じ調査で37.3%が答えているように「加算の単位数と比較して取り組みの負担が大きい」ことに帰結するのではないでしょうか(100人規模の施設でも月あたり僅か1万円ですから…)。
そうしたことを踏まえ、政府の規制改革推進会議の中間答申でも、効果検証の対象を限定したり、適用要件を最小限にしたりといった見直しを求める声が上がっており、2027年度介護報酬改定に向けた宿題になることが確実視されています。
いずれにしても、これらの上乗せ要件をクリアして初めて新区分が取得できるという前提があり、かつ、国からの財源措置は1.7万円分(定期昇給0.2万円は事業者の努力分)に留まることもあって、本当に「最大月1.9万円が実現」と言えるだけの結果になるのかどうか…。今後実施される調査の結果に大いに注目すべきと言えるでしょう。
もし不十分な場合は、より一層の強力な施策を速やかに講じるべきことは言うまでもありません。
◆ 2027年度改定の方向性は?
さて、2027年度改定に向けてはどのような議論が行われることになるのでしょうか。政権のベクトルから当然、社会保障負担率の抑制(介護給付費の効率化)が前提になるのでしょうから、業界としても、早い段階から問題意識を各方面に届けていく必要があります。
注目すべきことは多岐にわたりますが、1つは住宅型有料老人ホームの運営の適正化をめぐる議論です。今国会に提出された改正法案に盛り込まれた事前規制(登録制)の導入、それに伴う新たなケアマネジメント類型の創設から派生する議論は、2027年度改定の中軸になるとみられます。
個別の事業者が起こした問題を既成事実とするのはお決まりの手法。ここはある種、俎上の鯉的な扱いとなる事態は避けられないでしょう。
そして、やはり重要になるのは生産性向上に関する施策の動向です。生産性向上加算の要件の見直しは歓迎すべきものになる可能性が高いですし、厚労省は施設などのランニングコストを把握する方針も示しています。
ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上加算の取得などはもはや必須です。政府は国策として業務の効率化、職員の負担軽減、働く環境の改善などを推進する構えで、これらが引き続き政策上重視されていくことは確実。LIFEとともに、事業者としては「付き合うしかない」という性格が強くなっていくのだろうと感じます。
いずれにしても2027年度改定では、今年度の期中改定で手がつけられなかった経営改善(基本報酬の引き上げ)を主眼に、こうした各論でも実態と乖離した見直しがされないよう、議論のポイントと進捗をしっかりと把握し、業界側から適宜発信していくことが例年以上に重要となります。
皆さまにおかれてもぜひそれぞれの立場で、然るべき声を上げ続けていただくことを願ってやみません。








