【激変】住宅型ホームを揺るがす地殻変動 登録制の開始と報酬改定リスクに立ち向かう経営戦略=小濱道博
今年の法改正により、住宅型有料老人ホームに登録制が導入されることになった。厚生労働省の検討会では、現に中重度の要介護者が入居しているホームだけでなく、やがて中重度になっても住み続けられるホーム、一定の認知症や医療ニーズがある高齢者を受け入れるホームであれば、登録制の対象になるとの考えが示された。既存のホームの大半が対象になる見通しだ。【小濱道博】
◆ 対象が一部に限られると不利になる
こうした方向性は、事業者にとって歓迎すべきものである。理由は、登録を受けたホームの入居者に生じる新しい負担にある。
登録を受けたホームの入居者は、これまでの居宅介護支援ではなく、新たに設けられる登録施設介護支援を利用することになる。そして、この新しい仕組みでは、ケアプランの作成に原則1割の利用者負担が生じる。
もし、登録制の対象が一部のホームだけに限られたとすれば、どうなるか。登録を受けたホームの入居者だけが1割負担を求められ、対象外のホームの入居者は従来通り負担がないという差が生まれる。
同じ地域で入居者を迎える立場からすれば、これは明らかな不利である。負担の有無が入居先選びの判断材料になれば、対象となったホームだけが選ばれにくくなる。
つまり、対象が広いほど条件は横並びになり、狭いほど対象となったホームが不利を負う。大半のホームが対象になるということは、この意味で望ましい見通しである。
対象の範囲は、実際に今どういう方が入居しているかではなく、どういう方を受け入れる構えでいるかによって判断される。多くのホームが看取りまでを視野に入れて運営している現状からすれば、大半が対象になるという見通しは実態に即したものといえる。
◆ 本当の焦点は経営実態調査にある
しかし、登録制そのものよりも大きな影響をもたらしかねない動きがある。国の「経営実態調査」において、ホームなどに併設される事業所とそれ以外の事業所とを分けて調べ、それぞれデータを出す方針が示されていることである。
これを分けて集計すれば、訪問介護をはじめとする併設型の事業所の経営状況が単独で明らかになる。
併設型は移動の時間が短く、限られた人員で多くの訪問をこなせるため、収支差率が高く出やすい。その数字がそのまま報酬改定の根拠として用いられれば、併設型の報酬が大きく引き下げられることになりかねない。ホームの運営とあわせて訪問介護などを提供している事業者にとっては、経営の土台に関わる問題である。
これまでは、併設型もそれ以外も一つにまとめて集計されてきた。地域を回る事業所の厳しい数字と合わせて平均が出されていたため、併設型の収支の高さは表に出にくかった。
これを分けて集計するということは、その平均の陰に隠れていた部分に光が当たるということである。数字が示されれば、それに応じた見直しが求められるのは自然な流れであり、備えのないまま迎えれば影響は大きい。
さらに、診療報酬改定で訪問看護の報酬に定額制が導入されたことも見過ごせない。提供した回数に応じて報酬が積み上がる仕組みから、一定額を支払う仕組みへの転換である。
医療の分野で採り入れられた考え方は、時をおいて介護の分野にも及ぶことが少なくない。仮に訪問介護などの報酬が定額制に近づけば、回数を重ねることで収益を確保してきた事業の形は成り立たなくなる。
併設型の報酬の引き下げと定額制への転換が重なれば、影響は決して小さくない。
◆ 答えは業務改善と効率化にある
これらの懸念に共通する備えは一つである。報酬が下がっても、あるいは回数に応じて報酬が増えなくなっても成り立つ体制を、今のうちに整えておくことである。言い換えれば、同じ人数でより多くの、より質の高いサービスを届けられるようにすることである。
その手立てとして、まず取り組むべきはAIの活用である。記録の作成、書類の整理、シフトの調整といった、これまで人の手と時間を要してきた業務には、置き換えられる部分が数多くある。
事務の時間が減れば、その分を利用者に向き合う時間に振り向けられる。報酬が下がる局面において、これは失った分を取り戻す現実的な方法である。
もう一つが外国人材の受け入れである。人手が確保できなければ、どれほど効率を高めても提供できるサービスの量には限りがある。
受け入れには住まいの確保や生活の支援、受け入れ側の職員の理解など準備すべきことが多く、これは思い立ってすぐに整うものではない。制度面でも技能実習から育成就労への移行が控えており、早く着手した事業者ほど新しい制度に慣れる時間を得られる。報酬改定を待ってから動き出したのでは、とても間に合わない。
ホームの登録制への対応は、期限が決まっている以上、いずれ着手せざるを得ない。しかし業務の改善と人材の確保は、期限が示されないまま、遅れた事業者から順に苦しくなっていく性質のものである。今から始めておきたい。









