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2023年7月4日

【実践】まだまだ防げる介護職の離職 「1on1ミーティング」のススメ=山口宰

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《 社会福祉法人光朔会オリンピア・山口宰常務理事 》

人材不足に直面する介護現場のリーダー・管理職の皆さんの頭を悩ませている「離職」− 。これを防ぐためには、メンバー(部下)との定期的なコミュニケーションが欠かせません。今回は、コミュニケーションを通じた人材マネジメントの手法の1つである「1on1ミーティング」をご紹介したいと思います。【山口宰】

◆ 介護現場の離職の現状


かつて介護現場の人材不足の大きな原因となっていた介護職員の離職率の高さは、2020年度で14.9%となりました。17.8%だった10年前の2010年度と比較すると2.9ポイント低下し、全産業計の14.2%と遜色のない水準まで改善してきました。


各事業所での離職予防の取り組み、各種の処遇改善の効果と言うことができるでしょう。しかし、離職率に事業所ごとのばらつきが生じていることも見過ごせません。10%未満の事業所が46.6%を占めている一方で、30%以上の事業所も18.2%あると報告されています


実際、介護現場の管理職の皆さんとお話をしていると、数字以上に深刻な状況を耳にします。


「期待して育ててきたスタッフが、突然退職届を持ってきたんです」「スタッフが次々と辞めてしまって、来月のシフトが組めません」


こういった相談が、私のもとにもよく寄せられています。


これらのケースに共通するのが、「スタッフが突然辞めている」ということ。早い段階から相談を受けていれば、退職を引き止めたり計画的に次の人材を採用したりすることもできますが、想定外の退職は組織にとってもチームにとってもダメージが小さくありません。

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◆ いまなぜ、1on1ミーティングか


このような状況で注目を集めているのが、上司とメンバーとの定期的な対話である「1on1ミーティング」です。


1on1はアメリカのシリコンバレーで生まれました。その効果が広く認められ、世界中の多くの企業で人材マネジメントの手法として取り入れられています。最近では、介護の事業所でも導入するところが増えてきました。


1on1が一般的な面談やカウンセリングと大きく異なるのは、「全員に対して定期的に実施する」という点です。悩みを抱えていたり、仕事でミスをしたりしたメンバーと話す機会はあっても、「いまは順調なメンバー」と時間をとって話をする機会は多くありません。しかし、離職を防ぐためには「順調なメンバー」との対話がカギになります。


介護現場のリーダーと一般的な組織のリーダーの違いとして、「シフト制で仕事をしている」という点があげられます。例えばオフィスワークであれば、職場で多くの時間をメンバーと共有することもできますが、特に夜勤もある入所系サービスの施設などで勤務をしていると、メンバーの様子を常に見ることはできません。このように高度なマネジメントが求められる介護現場のリーダーにこそ、1on1はぜひ活用してもらいたい手法です。

◆ 1on1ミーティングの実践


1on1は「手が空いたからやる」のではなく、定期的にアポイントメントを取って実施します。週1回から月1回、30分から1時間程度が一般的ですが、最初から形にこだわりすぎるのではなく、まずはスタートすることが重要です。リラックスして話しやすい環境を作るため、コーヒーやお菓子を用意したり、時には場所を変えたりしてみることも効果的でしょう。


また、座る位置にも工夫が必要です。L字型は相手の意見に耳を傾けやすく、1on1に適していますが、相手が心地よく感じる物理的な距離を意識することが大切です。スペースの都合でL字型が難しいケースでは、横並び型で椅子を斜めに傾けたり、対角線上に対面で座ったりする手もあります。


それでは1on1の実際の流れを見ていきましょう。


(1)アイスブレイク


緊張感をほぐして場を和ませるために、1on1はアイスブレイクから始めましょう。最近のニュースや家族の近況、共通の趣味の話題など、話しやすいテーマを事前に用意しておくと導入がスムーズになります。


ここで注意したいのは、単なる雑談で終わらせないこと。話の中で、心身の不調や仕事に対するストレスがないか、注意を向けてみてください。また、相手が話しにくそうにしている場合には、こちらから自己開示をすることで話しやすい雰囲気を作ることができます。


(2)前回のおさらい


前回の1on1から今回までに起こった出来事や、前回のアクションプランの状況の確認をしてみましょう。もしかすると、忙しくて全く手をつけられていない、というケースもあるかもしれません。


ただ、それを責めるのは厳禁。「何が忙しかったのか」「どうして手をつけられなかったのか」をうまく探り出してみてください。仕事の負荷の状況から、業務改善のためのヒントが見つかるかもしれません。


(3)メインセッション


メインセッションのテーマは、最初のうちは事前に設定しておくことをお勧めしますが、リーダーがいつも一方的に決めてしまうのではなく、「一緒に」考えることが大切です。「チームのビジョン」「日常業務の改善」「個人の目標設定や評価」「キャリアパス」など、その時々の必要性に応じて設定してみましょう。


ただし、単なる「業務連絡」や「業務報告」にならないように注意してください。あくまでも「メンバーのため」に実施するのが1on1です。


最も重要なスキルは「聴く」技術です。特に、話し手が言語/非言語で発するメッセージを観察し、本質的な意図や感情を汲み取ることで、主体的に内容を把握していく「アクティブリスニング(積極的傾聴)」がよく用いられています。


「パーソン・センタード・アプローチ」で知られる心理学者のカール・ロジャーズは、「本物の傾聴」の条件として、相手の語ることをそのまま受け止める「受容」、その人自身の視点から理解する「共感的理解」、そしてその人が自分自身でいる「自己一致」をあげています。


深く話を聴く中で表面化した問題・課題については、コーチングやティーチング、フィードバックといったスキルも活用して、解決法を探り出していきましょう。でも、決して「答えを与える」のではなく、「答えにたどり着く手助けをする」ことが重要です。


(4)アクションプランの確認とまとめ


メインセッションで話したことは、具体的なアクションプランに落とし込まなければ意味がありません。「何を」「いつまでに」「どのような手段で」行うかを決定し、共有しておきましょう。


高すぎる目標はプレッシャーになってしまうので、「スモールステップ」でプランを立てることがポイントです。話し合ったこと、気づいたこと、アクションプランの内容などは「1on1シート」を使って記録していくことで、成長のプロセスを分析・評価することができるようになります。


そして、1on1の最後には、改めて「日ごろの感謝の気持ち」や「応援している」というメッセージを伝え、モチベーションを高めることができるようにしてください。1on1を終えて、「さあがんばろう」という前向きな気持ちをもってもらうことが理想的です。

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◆ 1on1の主役はメンバー


1on1を行ううえで最も重要な前提は、「そのメンバーについて最も良く知っているのは、そのメンバー本人である」ということです。メンバーが自分の力で気づき、成長するプロセスを支援するのが1on1なのです。


これを成功させるためには、メンバーに対して、丁寧にその背景や目的、そして期待される効果を説明することが大切です。機能し出すと、やる気を失いかけていたメンバー達が再び情熱を持って仕事に取り組むようになり、「突然の退職」に驚かされることは減っていくことでしょう。


1on1の導入にあたっては、事前の説明や時間・場所の確保、リーダーの研修など、組織が一丸となって取り組むことが必要となります。しかし、メンバーを成長させ、強い組織を作っていくためには、チャレンジする価値のあるツールではないでしょうか。


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