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2023年8月7日

介護報酬改定、特養が俎上に 関係者から悲鳴 「介護施設は前代未聞の経営危機」

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《 社保審・介護給付費分科会|2023年5月撮影 》

来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている国の審議会で7日、特別養護老人ホームが取り上げられた。【Joint編集部】

厚生労働省は論点として、「入所者のニーズに応え、安定的にサービスを提供するためにどんな方策が考えられるか」と投げかけた


委員からは様々な意見が出たが、そのうちの1つが今の経営状況の厳しさを訴えるもの。基本報酬の引き上げなど、十分な支援策を講じるよう求める声が相次いだ。


◆「崩壊を防ぐのが喫緊の課題」


「介護施設は前代未聞の経営危機に陥っている。キャッシュフローが回っていないことは明白だ」


日本医師会の江澤和彦常任理事はこう問題を提起。「更に物価高騰が襲いかかっており、大変な危機に瀕しているというのが共通の認識。介護施設の基本報酬の増額を図り、サービス提供体制の崩壊を防ぐことが喫緊の課題ではないか」と述べた。


福祉医療機構の調査結果によると、2021年度に赤字だった特養の割合は従来型が42.0%、ユニット型が30.5%。その影響は今ほど大きくないものの、光熱費の膨張や人件費の高まりで経費が増したことなどでいずれも前年度から悪化していた

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全国市長会を代表する大阪府豊中市の長内繁樹市長は、「経営が大変しんどくなってきている。光熱費など必要経費が大きくなり、経営難から施設を閉じざるを得ない事業者が出てくることも考えられる」と懸念を表明。「高齢者が必要なサービスを受けられなくなると危惧している。国には迅速かつ柔軟な支援措置をお願いしたい」と呼びかけた。


一方、特養の経営者らで組織する全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、審議会の会長宛の正式な要望書を提示。「物価高に対応する“賃上げ機運”の高まりにつれて人材が異業種へ流出するなど、人材難にも拍車がかかっている。もはや施設の経営努力だけでは限界に来ている。大幅な介護報酬の増額を」と注文した。


あわせて、今後はインフレを想定した新たな仕組みが必要ではないかと指摘。3年に1度のサイクルで実施される報酬改定の間のコスト増に対応していくため、その上昇率と連動する物価スライド、賃金スライドの導入を検討すべきと提言した。


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