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2023年10月30日

やるべきは検索ではなく対話! 介護現場でChatGPTを有効活用するポイント

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《 エクサホームケア「CareWizメディア」編集長|飯室達也氏 》

「あれは一過性のブームだった」という人もいる。ただ、これから社会の中で存在感を着実に増していくことになるのだろう。大小のテクノロジー企業がそのプロダクトに相次いで採用しているほか、日本政府も官僚の負担軽減などに役立てる道を検討し始めている。【Joint編集部】

ChatGPTの話だ。メディアなどで連日大きく取り上げられた時期から少し経った今だからこそ、高齢者らを支える介護現場でどのように活用できるかを落ち着いて取りあげてみてはどうか − 。そんな助言を受け、業界でAI活用をリードする株式会社エクサホームケアを思い切って訪ねた。


エクサホームケアは「AIと仕組みで多様性のある超高齢社会を実現する」をミッションに掲げている。取材に応じてくれたのは、「CareWizメディア」編集長の飯室達也氏。作業療法士として介護施設・事業所の運営に携わったキャリアも持ち、その中で介護現場にはテクノロジーの活用が不可欠だと感じたという。今は業務でChatGPTを毎日使い、介護現場向けにうまく応用できないかと試行錯誤を続けている。


インタビューでは重要な学びをいくつも得ることができた。そのうちの1つが、やはり「やるべきは検索ではなく対話の積み重ね」ということ。また、事務負担の効率化を目指しつつも個々の書類の持つ本来の意義・目的を軽視してはいけない、ということも改めて心に留めた。


◆「試さない手はない」

《 エクサホームケア「CareWizメディア」編集長|飯室達也氏 》

  −− こんにちは。今日はChatGPTのお話を聞きにきました。どうぞよろしくお願い致します。


よろしくお願いします。


  −− 対人サービスを主とする介護現場ですが、やはりChatGPTは活用していくべきツールなのでしょうか?


もちろんです。まずは意義が非常に大きいと強調させて頂きたいです。


活用すべきか否か、というのは少し慎重すぎるかもしれないと思います。活用するかどうかより、「どう活用すべきか」という話に移らなければいけません。実際に使ってみなければ、その良し悪しを把握することすらできないわけですから。


今なお「なんとなく使わない」という姿勢の方は、その考え方を変えることで運営・経営のスキルを次のレベルへ引き上げるチャンスを得られるかもしれません。ChatGPTはそれくらいインパクトのあるツールです。まずは1歩踏み出すこと、行動を起こすことが重要ではないでしょうか。

《 エクサホームケア「CareWizメディア」編集長|飯室達也氏 》

  −− おっしゃる活用の意義を教えてください。


介護分野の最も深刻な課題の1つは、必要な人材の確保です。事業者が自ら取り組める施策で重要なのが、できる限りの業務負担の軽減、労働環境の改善でしょう。


人材不足であることは揺るがぬ事実ですから、限られた人員で生産性の向上を実現することが重要です。この課題に対して、介護現場の皆さんはそれぞれ様々な対策を講じているかと思いますが、その1つとしてChatGPTは大きな可能性を秘めています。


  −− やはり事務作業の効率化ですね?


高齢者を支える直接的な介護を提供することは、AIが最も苦手とする領域の1つです。人間にしか担えない仕事として、介護はかなり先まで残り続けるでしょう。


だからこそ、人間が高齢者と向き合うことに専念できる環境を作らなければいけません。人手不足が業界横断的な課題として日本全体を覆っていく今後、AIをうまく使って事務作業を効率化していくことは、個別の介護施設・事業所だけでなく社会全体を良くすることにつながるはずです。

《 エクサホームケア「CareWizメディア」編集長|飯室達也氏 》

もちろん、新しいことを始めるのは誰にとっても大変なことです。しかし、ChatGPTは無料でタイピングさえできればすぐに使えます。将来の投資と捉えて試さない手はない、と考えています。


◆「ChatGPTは右腕。上司にも部下にもなってくれる」


  −− 具体的にはどんなシーンで活用できますか?


まずは書類の作成、またはそこに記載する文章の作成です。各種の計画書、報告書、会議の記録、営業のPRチラシ、関係先へのメール、職員の育成プラン、各種マニュアル、レクリエーションのメニューなどを作る際に、最初のたたき台、下書きなどをChatGPTに用意してもらう形が始めはおすすめです。より応用的な使い方をしていくと、事業課題の解決策を探る際の壁打ち相手、相談相手として頼るのも効果的です。


  −− 相談相手として頼る、という使い方もあるんですね。


はい。というかそれがメインと言っても過言ではありません。


ChatGPTは自分の右腕、あるいは補佐役と捉えるのが的確だと思います。こちらの伝え方次第で、指示通りに動く部下の役割も助言をくれる上司の役割も担ってくれます。大切なことは、仕事をうまく進めるために相手とどんなコミュニケーションをとるのか、ではないでしょうか。

《 東京都内のエクサホームケアのオフィス 》

  −− 活用する際のポイント、基本を教えて下さい。


まずは技術的なことからですが、最初に「オプトアウト」することをおすすめしています。


「オプトアウト」とは、簡単に言うとサービスを通じて運営側が得られるデータの第3者への提供を拒否することです。ChatGPTの場合、例えば入力した情報を学習データとして事後的に使用させないことなども意味します。


介護現場が扱う個人情報などが、誤って漏洩してしまうことを防ぐ観点から欠かせません。もちろん、そもそも個人情報を安易に入力しないという配慮が不可欠ですが、ChatGPTの設定画面や申請フォームから簡単に申請できますので、「オプトアウト」もまず最初に済ませておくことをおすすめします。


◆「重要なのは指示の精度と対話」


  −−「オプトアウト」はマストですね。活用の基本としては、他にどんなことがありますか?

《 エクサホームケア「CareWizメディア」編集長|飯室達也氏 》

そうですね。これは向き合い方の問題なのですが…。


よく「使ったことあるけど使えないじゃん…」という意見を頂きます。活用のポイントとしてまず心がけたいのが、ChatGPTはGoogleのような検索サービスではなく、対話を行い、自分の知見とかけ合わせて答えを導き出すサービスである、ということです。


例えば、「通所介護の運営基準を教えて」「処遇改善加算の算定要件を教えて」と頼んでも、今はまだ正確な答えが返ってきません。それだけを見て、「全く使えないな」と見放してしまうのがよくあるパターンです。


そうではなくて、書類や文章の作成をサポートしてくれるツールと捉える方が的確です。「会議の報告書を作りたい」「◯◯さんのこの話が重要だった」と指示すれば、最初のたたき台、下書きを用意してくれます。こちらの指示の精度が高ければ高いほど返答は良くなる、ということも重要なポイントと言えるでしょう。


どんな書類でもそうですが、全くのゼロから作るより下書きを修正する形で作っていく方が効率的です。計画書でも報告書でも、みんな最初の書き出しに最も苦労しているのではないでしょうか。

《 エクサホームケア「CareWizメディア」編集長|飯室達也氏 》

  −− なるほど。指示の精度はかなり重要になりそうですね。


大切なのは「対話」を重ねることです。すぐに完璧なものが出てくるわけではない、という意識がまず必要になるでしょう。


例えば日々の仕事のシーンを思い浮かべて下さい。作成を頼んでいた書類を部下が持ってきた時に、内容をみて「ここはおかしいよ」「直してね」と伝えることがありますよね。


ChatGPTともこうしたやり取りをすることで、より良い下書きを作ってもらうことができます。部下とのやり取りと一緒だと思うと良いです。また、自分の思考を整理したり新たな視点を見つけたりすることにもつながるでしょう。あくまでもサポート役・補佐役として捉えてください。


最初は面倒だと感じるかもしれませんが、慣れれば自分でゼロから作るより圧倒的に効率的です。24時間いつでも対応可能という点などを考えると、人間よりも柔軟にサポートしてくれると言えるかもしれません。


  −− ChatGPTを活用する際の注意点はありませんか?

《 エクサホームケア「CareWizメディア」編集長|飯室達也氏 》

常に意識しておかなければならないのは、書類を作成する本来の意義・目的を見失ってはいけないということでしょうか。


事務作業の負担軽減が重要なことは間違いありません。ただ、個々の書類、またはその様式はそれぞれ大切な意味を持っています。それを軽視するようになれば、適切な事業運営や質の高いサービスの提供などはおぼつかなくなるでしょう。必要なのはあくまで業務の効率化であって、その業務の趣旨、本来の目的を蔑ろにしてはいけません。


やはり適切な事業者として、自分自身の考えを各々が持つことが不可欠です。ChatGPTが作ったものを真に受け、懐疑的な目を向けることなくそのまま自分のものとするのは危険です。


法令遵守の視点、健全経営の視点、質の高いケアの視点などから管理することが大前提。それこそがまさに、当面は人間にしかできない重要な仕事なのではないでしょうか。


「AIに仕事を奪われるのか?」と考えている方もいるかもしれませんが、決して敵ではなく心強い相棒だと捉えてください。介護という領域の中で本当に必要なケアの時間をサポートしてくれる。そんな風に捉えて使ってみることをおすすめします。


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