daiichihoki-2025.7-sp-top-banner02
2025年6月26日

【青柳直樹】協力医療機関の選定義務化、介護施設は対応を急げ 4割超が未契約 体制構築の遅れは許されない

このエントリーをはてなブックマークに追加
《 ドクターメイト株式会社・青柳直樹代表 》

2024年度の介護報酬改定で介護施設に協力医療機関の選定が義務付けられてから、1年あまりが経過しました。【青柳直樹】

monakaya-2025.7-sp02-banner01

国は介護施設と医療機関の連携強化を施策の柱の1つに掲げ、その実現に向けて強い意志を示しています。経過措置の期間は2026年度まで。この間に体制を確実に構築することが求められますが、現場の状況は決して順風満帆とは言えません。



厚生労働省の調査結果によれば、協力医療機関との契約をすでに結んでいる特養は56%にとどまり、4割以上が未契約のままというのが現状です。特に驚くべきは、未契約の特養の31%が「まだ何も検討していない」と回答している点です。


現場では「経過措置が残っているから大丈夫」という声も一部にありますが、国は今回の義務化を極めて重視しており、「経過措置の延長」や「条件の大幅な緩和」は現時点で具体的に議論されていません。つまり、早めに動かなければ早晩追い詰められる可能性が高いのです。


◆ 自治体も対応に苦慮…


自治体の役割も日に日に重要になっています。厚労省は5月に通知を発出し、介護施設と協力医療機関のマッチングや助言を積極的に行うよう要請しました。


しかし、自治体側も戸惑いを抱えているようです。実際、私のもとには自治体の担当者から「国は言うけれど、どのように進めればよいか分からない」という声が届いています。協力医療機関のリストを作成すればいいのか、どこまで介入するべきなのか……。現場の声を聞けば、担当者がそれぞれ手探りで対応している実情が見えてきます。


また、地域によっては「これまで連携してきた医療機関が要件を満たさない」「そもそも要件を満たす医療機関が少ない」など、簡単には超えられないハードルも存在しています。


国は今年秋に追加調査を実施し、実態をより詳細に把握したうえで更なる対策を検討していく構えですが、重要なのはやはり、国の目指す方向は変わらないという点です。医療・介護連携は今後の施策の根幹であり、求められる連携体制のレベルは今後も維持、もしくは強化される見込みです。

welmo-article-2025.7-01-lead-sp-banner01

◆ 施設が取るべき具体的アクション


今最も重要なのは、まだ動いていない介護施設の皆さんが「一日も早く行動を開始すること」です。協力医療機関の選定は、自治体任せにしていては前へ進みません。


まずは従来から協力してきた医療機関に対し、新たな要件に基づく契約締結を打診しましょう。病院側から声をかけてくるケースは稀です。だからこそ、介護施設側が主体的にアプローチを始める必要があります。


その際、厚労省や業界団体が公表している契約書のひな形などを活用すれば、交渉のハードルを下げることができます。既存のツールをうまく活かし、具体的な話し合いを進めてください。


それでも難しい場合は、地域のコンサルタント、病院と介護施設の橋渡しを担う外部の支援事業者に相談するのも有効です。また、地域の事情でどうしても要件を満たす医療機関が見つからない場合は、素直に自治体へ相談して協議を重ね、要件の弾力的な運用や例外措置などの可能性を探るべきでしょう。何もせずに放っておいてはいけません。

lineworks-article-2025.6-lead-sp-banner01

◆ 国は本気、行動の遅れはリスクに


協力医療機関の選定の義務化は、単に「形式的に契約を結ぶこと」が目的ではありません。不要な入院を防ぎ、介護施設内でできる限りの医療的対応を行い、医療資源の有効活用を図ることこそが真の狙いです。そのためには、医療機関と胸襟を開いた対話を重ね、双方の立場や負担を理解しながら、持続可能な連携関係を築かなければなりません。


現場では「病院側に十分なインセンティブがなく、協力を得にくい」という声も聞かれます。これについては、次期診療報酬改定に向けて病院側の評価の見直しなども検討されていますが、すぐに形になる保証はありません。だからこそ、今ある資源を最大限に活用し、早期に道筋をつけることが重要ではないでしょうか。


改めて強調します。国は医療・介護連携を制度の柱に据え、協力医療機関の選定の義務化を非常に重要な施策と位置付けています。「経過措置の延長があるだろう」「要件はそのうち緩和されるはず」という淡い期待は、やがて通用しなくなるでしょう。


実際、全国の半数以上の特養がすでに契約を済ませています。未契約のままでは、今後ますます立場が厳しくなるのは明白です。


介護施設の皆さまには、ぜひ一歩を踏み出し、協力医療機関との連携を確かなものにしていただきたいと思います。それはご利用者の安全・安心を守るだけでなく、施設の信頼性や今後の経営の安定にも直結する取り組みです。


国も自治体も、そして周囲の支援プレーヤーも、皆さまの動きを後押しする準備は整っています。あとは、施設が勇気をもって行動を起こす番です。


lineworks-article-2025.6-lead-pc-side-banner01
Access Ranking
人気記事
介護ニュースJoint