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2023年10月25日

【解説】ケアプランの「課題分析標準項目」、初の大幅改正 その意図は? 施行時期は?=石山麗子

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《 国際医療福祉大学大学院・石山麗子教授 》

厚生労働省は10月16日に出した介護保険最新情報Vol.1178で、介護支援専門員がケアプランを作る際などに用いる「課題分析標準項目」の一部改正を通知しました。併せて、介護保険最新情報Vol.1179でそのQ&Aも発出しました。【石山麗子】

課題分析標準項目は過去に1度、「痴呆」という言葉を「認知症」へ変更するといった用語修正が行われたことがあります。今回は内容の変更を伴いますので、制度施行以来、初めての改正と言えます。


項目数は新旧変化なく、23項目のままではありますが、項目名や記載例が幅広く改正されたことで、ケアマネジャー、事業所管理者、保険者、ケアプラン作成ソフト会社の方などの中には、ご不安を抱いていらっしゃる方がおられるのではないかと思います。筆者は、課題分析標準項目の改定に向けた委員会の委員でしたので、筆者が認識している改定の背景や概略をお伝えします。


多くの方が最も気にされているのは、「いつ施行開始なのか」ということではないでしょうか。介護保険最新情報ではこの点が明示されていません。


なぜなら、今回発出されたのが課長通知だからです。通知ですから、国としては「~~せねばならない」という意図で示したものではありません。つまり、厚生労働省に対して施行日を質問したとしても、現場が欲しい答えを得るのは難しいでしょう。

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筆者は次のように考えています。


現在使用しているアセスメントシートは、(介護保険最新情報Vol.1178に示す)旧課題分析標準項目に則って作られています。ということは、課長通知であれ、これに準拠して実施しているわけですから、ある意味実行性を伴う通知であると解釈します。となれば、改定版が示された今、順次変更していくというのが妥当でしょう。


とはいえ、すぐに変更せよと言われても難しいですから、具体的な運用開始時期は、保険者と相談して決定するのが現実的です。筆者としては、できれば、新たな法定研修カリキュラムが施行される来年度から新しい課題分析標準項目を使用するのが望ましいと考えています。その理由は、課題分析標準項目が改定された背景にあります。


旧課題分析標準項目は、介護保険制度の開始前に作成され、現在まで使用されてきました。改めて考えると、20数年も変わらない項目で本当に良いのでしょうか。


要介護の主な原因疾患は、脳卒中から認知症へ変化し、平均寿命は2001年と2016年とを比較すると、男性は78.07歳から80.98歳へ、女性は84.93歳から87.14歳へ延伸しました。


以前、家族状況は三世代同居で主な介護者は“お嫁さん”でしたが、現在は老々介護と独居が増加しました。身寄りのない方の支援も珍しくありません。インターネットの普及率は、2000年の37.1%から2021年には82.9%へ上昇し、携帯電話からスマートフォンへと日頃の生活で使用するデバイスも変化しました。

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ケアマネジメントはニーズの充足を図り、社会資源を活用します。つまり、ニーズの抽出は極めて的確さを求められます。


であるにもかかわらず、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」を抽出するアセスメント項目が2000年に作られたものと同じでよいのでしょうか。もし被保険者に尋ねたら、「今日的な内容にアップデートしてほしい」という声が聞こえてきそうです。


新しい課題分析標準項目には、コミュニケーションの項目に電話だけでなくPCやスマートフォンも明記されました。


また、「介護力」の項目は「家族等の状況」へと名称変更されました。なぜなら、今日はケアラーという概念があり、家族=介護者ではなく、家族も自分の人生を歩む1人の人として捉えるためです。様々な状況と家族の意思を確認したうえで、結果的に家族が介護を担うことと、専門職が最初から「ご家族が介護できることは何ですか」という姿勢で関わることは、それを受ける家族側にとって大きな違いがあります。


厚生労働省は、今回の通知のQ&Aで改正の理由について、「記載が一部現状とそぐわないものになっている」と説明しています。まさに上記はその一例です。


また、来年度からの新たな法定研修に導入される「適切なケアマネジメント手法」に準拠した項目と記載例になった、ということも重要なポイントです。むしろ、「適切なケアマネジメント手法」の要素がちりばめられている、といった方が適切かもしれません。


「適切なケアマネジメント手法」を丁寧に学習・実践した方は、改正版の課題分析標準項目を見た瞬間に、その該当箇所が浮かび上がってみえるでしょう。つまり、法定研修で学習した内容と日頃のケアマネジメント実践が連動するような工夫もなされている、ということです。


その点は、またの機会に解説しましょう。


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