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2023年12月21日

【直言】非常に残念! 介護報酬+1.59% 賃上げも事業所支援も足りないと言わざるを得ない=結城康博

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《 淑徳大学総合福祉学部 結城康博教授 》

来年度の介護報酬改定率が決まった


私は、今回の決定過程で、例えば介護業界による繰り返しのロビー活動、厚労省による財務省との予算折衝などの場面で、多くの方々が努力されたと認識している。関係者の方々には心から謝辞を申し述べたい。【結城康博】

しかし、+1.59%という水準では「残念!」と評価せざるを得ない。正直、介護現場でも「より大幅なアップは難しかったか…」との印象を抱いている人が多いはずだ。


1.処遇改善分を差し引けば前回を下回る


来年度の介護報酬改定率は+1.59%で決着した。介護職員の「処遇改善加算」の上乗せ分が+0.98%であるから、差し引けば+0.61%が介護事業所へ新たに配分されるパーセンテージである。


これは2021年度の改定率(0.7%)を下回る。昨今の改定率の推移をみると、2018年度が+0.54%、2021年度が+0.7%、2022年度が+1.13%となっている。


来年度は診療報酬との同時改定となるため、改定率は診療報酬本体と比較されがちだ。今回、初めて介護報酬が診療報酬本体(0.88%)を上回ったという評価もあるが、冷静に考えてみると、2021年度の改定率よりも低い水準となったことは看過できない。処遇改善加算の上乗せ分を除いた介護報酬は+0.61%、診療報酬本体は+0.88%。やはりその「壁」は高かった。


2.僅かな+0.61%は施設に優先配分?


3年間のコロナ禍で介護事業所の体力は弱体化した。昨今の物価高も重なり、事業継続を不安視している経営者も多い。そのため、事業所に配分される財源が+0.61%では不十分といえよう。


国の「介護事業経営実態調査」では、特養や老健など施設の収支差率が赤字となっていた。一方で、在宅サービスの収支差率は悪い結果ではなかった。つまり、僅かな+0.61%の財源は施設を中心に配分される可能性が高いと考える。


もっとも、収支差率の調査は事業を継続している介護事業所を対象として行われている。訪問介護や通所介護などの在宅サービスでは、赤字となれば短期間で閉鎖や撤退に追い込まれる事業所も少なくない。つまり在宅サービスでは、非常に厳しい経営状況の事業所が調査対象に含まれていない可能性もある。


今回、政府は介護職員の処遇改善を継続的に検討していく方針を打ち出したが、少なくとも2年間は6000円+α程度の賃上げに留まる見通しだ。正直、この額では人材不足の解決には全くならない。引き続き、介護事業所が閉鎖・撤退するケースが生じ続けるであろう。

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3.評価できる利用者負担増の見送り


今回、注目された改正点の1つが、介護サービス利用時の2割負担の対象拡大が実施されるか否かであった。結果として見送られることとなり、市民目線で大いに評価できる。厚労省・財務省の英断に深く感謝したい。


ただし、2027年度の改正で対象拡大となる可能性が高いと考えられる。あわせて、要介護1・2の訪問介護・通所介護の総合事業化の議論も見逃せない。ケアマネジメントの自己負担の導入も同様である。

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4.改定率と負担増のバーター論


今後、利用者負担の引き上げや給付費の抑制策は、介護報酬改定率と連動するであろう。来年度の介護報酬改定率の決定過程でも、当初は2%、3%の引き上げが実現するのではないかとの憶測が一部にあった。ただし、その財源の確保策として2割負担の対象拡大が想定されていたのかもしれない。


確かに「そろばん勘定」では計算が合うが、利用者負担の引き上げや給付費の抑制策をバーターにした介護報酬の引き上げは避けるべきである。介護報酬の引き上げにあたっては、介護保険制度内で財源を調整するのではなく、新たな財源確保の途を考えていくべきだ。そのためには、世論の支持も幅広く得ていかなければならない。


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