2024年1月15日

介護報酬1.59%増 老施協・大山会長「新たな戦いのスタートライン。必要な追加策を訴えていく」

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《 全国老人福祉施設協議会・大山知子会長 》

政府は昨年末、介護報酬を来年度から1.59%引き上げる方針を決定した。この数字をどうみるか、国への働きかけなどを行ってきた全国老人福祉施設協議会の大山知子会長に聞いた。【Joint編集部】

大山会長は、「厳しい結果になった。業界が希望したパーセンテージではない」と語った。全国の組織が団結して活動したからこそ一定の成果を得られたと振り返りつつ、深刻な人手不足や物価高騰などで追い詰められている介護現場を案じた。


「単にプラス改定になったから良かった、とはやはり言えない」。


今後については、「まず今回の報酬改定の効果・影響をしっかり見極めないといけない」と指摘。特養などの経営動向を把握する実態調査を速やかに行う意向を示し、「介護現場の窮状が変わらないことがはっきりすれば、迅速に追加策を講じるべきだ。来年度の報酬改定は新たな戦いのスタートライン。我々はエビデンスを基により積極的に訴えていく」と前を向いた。


大山会長のインタビュー要旨は下記の通り。

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全国老人福祉施設協議会・大山知子会長のインタビュー要旨。


◆「もちろん評価はしているが…」


まずは各都道府県、指定都市の老施協・デイ協の皆様、全ての関係者の皆様に感謝を伝えたいです。皆が同じ目的を持ち、団結して積極的に要請活動を展開したからこそ、プラス1.59%という一定の成果を得ることができました。


今の介護現場の厳しさを、政府や国会議員の皆様にご理解いただけたことも大きいと思います。永田町や霞ヶ関の皆様には、我々の声を踏まえたご尽力を実際にして頂きました。もちろんその点はしっかり評価していますし、大変ありがたいことだと思っています。


ただ、介護現場にとっては厳しい結果になったと言わざるを得ません。業界が希望してきたパーセンテージには至りませんでした。単にプラス改定になったから良かった、とはやはり言えません。これで一気に事態が好転していくはず、とはなかなか言えないと捉えています。


我々はまず、今回の報酬改定の効果・影響をしっかりと見極めないといけません。


非常に厳しい経営状況が少しずつ改善へ向かうのか、貴重な人材の他産業への流出を食い止められるのか、あるいは更に悪化していってしまうのか − 。


特養などの経営動向を把握する実態調査を速やかに行います。そのエビデンスを基に、介護現場を支えるための活動を積極的に展開していきます。

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◆「物価・賃金スライド」など要請へ


今の窮状が変わらないことがはっきりすれば、政府は迅速に追加策を講じるべきでしょう。報酬改定は基本的に3年に1度ですが、3年間待つ余裕は介護現場にはありません。当然、必要であれば来年度からでも相応の手を打つべきです。


社会経済情勢は大きく変わりました。物価の上昇が続いており、他産業では来年度も大幅な賃上げを目指す動きが表面化しています。介護現場だけが取り残されてはいけません。


来年度の報酬改定は新たな戦いのスタートラインです。我々は経営動向の実態調査を毎年行い、必要な施策を迅速に講じるよう政府に継続して働きかけます。例えば、物価や賃金の上昇率に応じて報酬を見直す「物価・賃金スライド」の導入などを、エビデンスを基に訴えていきます。


介護現場の厳しさを常に意識して頂けるよう、引き続き今回のように全国の組織が団結して要請活動を展開していくことが重要です。介護現場を守ることは、高齢者の命や尊厳を守ること、現役世代の働く環境を守ることに他なりません。広く国民の理解を得ていくことも1つのカギになるでしょう。


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