2024年4月13日

ケアマネのシャドーワークを「できるだけなくすべき」 協会が新たな検討会で訴えること

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《 日本介護支援専門員協会・柴口里則会長 》

今年度はケアマネジャーにとって大きな節目となりそうだ。介護保険制度の要が様々な困難に直面しており、国は対策を議論する有識者会議を15日から始動する。【Joint編集部】

論点は多岐にわたる。地域の期待に応える形で広がった業務範囲の整理はその1つだ。居宅介護支援のケアマネジメントで利用者負担を徴収するか否か、も重要なテーマとなる。


ケアマネの処遇改善・負担軽減とサービスの質の維持・向上をどう両立させるか − 。これが最大の課題となる。


そこで、日本介護支援専門員協会に取材を申し込んだ。委員として有識者会議に参加する柴口里則会長を直撃。新年度の介護報酬改定の中身をどう捉えているかも含め、今後の議論に向けた考え方を聞いてきた。


柴口会長はケアマネの業務範囲の問題について、「シャドーワークをできるだけ少なくすべき」と強調。「介護支援専門員の職責を狭くするというより、その重要な役割に見合う対価を求めるべきと考える」と述べた。


◆「処遇改善を強く訴える」

《 日本介護支援専門員協会・柴口里則会長 》

  −− 新年度の居宅介護支援の介護報酬改定は、基本報酬や特定事業所加算などが引き上げとなりました。全体をどう評価していますか?


非常に悪い結果、ではなかったと捉えています。今の居宅介護支援の厳しい状況を、ある程度は伝えられたのではないでしょうか。協会として団結し、チームで繰り返し働きかけた成果だと思っています。


  −− 居宅介護支援はプラス改定が続いています。


まだまだ不十分です。処遇改善の観点から全く満足していません。


私はこれまで繰り返し、当面は年収500万円を目指すと言ってきました。介護支援専門員としての給与で家族を支え、子供を育てられるようにしなければいけません。


500万円は難しい、という意見が出るのも分かります。ただ、若い方も含めて人材を確保していくためには不可欠ではないでしょうか。新たな有識者会議でも、そうした処遇改善の必要性は強く訴えていくつもりです。

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◆「担当件数は希望次第」


  −− ケアマネ1人あたりの担当件数を増やせる規制緩和も続いています。この方向性はどう評価していますか?


頑張る方が報われやすい制度になってきており、概ね歓迎しています。サービスの質を維持して多くの件数を持つ介護支援専門員は、より高い収入を得られるようになるでしょう。


例えば、開業医の先生なども同じように頑張っておられます。評判が良ければ忙しくなりますが、収入も相応に増えることになります。介護支援専門員もそんな環境で働けるようになれば良いでしょう。


  −− 業務負担の更なる増大を懸念する声もあります。


みんな多くのケースを持て、とは誰も言っていません。望む働き方はそれぞれ異なりますから、担当件数だって違っていいのではないでしょうか。


あくまでも希望と能力次第。多く持ちたい人、実際に持てる人が持てばいいということです。そのうえで業務をしっかりこなす介護支援専門員には、相応の収入もついてくることになるでしょう。


  −− 嫌なのにむりやり持たされる、ということはないのでしょうか?


もしあれば、それは経営者・管理者の方に問題があると思います。専門職としての思い、望む働き方に向き合ってもらえない場合は、他へ移ることも含めてご検討ください。多くの事業所が介護支援専門員を募集しています。


経営者・管理者の目線で言うと、個々の希望や能力をよりきめ細かく見なければいけません。今後、そうした適切なマネジメントの重要性は一段と高まるでしょう。

《 日本介護支援専門員協会・柴口里則会長 》

◆「導入論がかなり強まった」


  −− 新たな有識者会議では、居宅介護支援の利用者負担の導入も議論されることになりそうです。協会はこれまで反対を主張されてこられました。


それは今も変わりません。ただ、導入すべきという意見が以前よりかなり強くなってきていることも事実だと思います。我々は有識者会議で、引き続き慎重な検討を求めていこうと考えています。


なぜ居宅介護支援は10割給付となったのか − 。今こそ改めて、制度の原点に立ち返って議論を深めて頂きたい。


単に財政が厳しいから利用者負担を導入します、という話ではいけません。制度の理念を度外視することになってしまいます。利用者負担を導入すると言うならば、まずそうした考え方をしっかり整理することが欠かせません。財政の問題だけで論じてはいけないということは、有識者会議でも強く訴えていくつもりです。

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◆「議論を深める機会に」


  −− 新たな有識者会議のテーマには、ケアマネの業務範囲の整理もあがっています。どんな議論を期待しますか?


なかなか難しい話ですよね。期待される役割が広がっていることは課題ですが、一律に線を引くことも簡単ではないでしょう。


私個人としては、自分の仕事の範囲を自ら矮小化しないように心がけてきました。もちろん、個々の介護支援専門員によって考え方は異なります。頑張って疲弊している方、負担が重くて辞めたいという方もいますから、対策をしっかり検討する必要があることは確かです。


超高齢社会の日本にとって非常に重要なテーマではないでしょうか。介護支援専門員の人材確保とも深く関係する話です。議論を深める良い機会になればと思います。


  −− 協会としてはどんなことを主張していきますか?


介護支援専門員の職責を狭くするというより、その重要な役割に見合う対価を求めるべきと考えています。まずは基本報酬の引き上げ。業務範囲の問題の対策としても、非常に重要な手段の1つではないでしょうか。


あわせて、シャドーワークをできるだけ少なくすべきだと訴えていきます。地域で高齢者を支えるための活動が、無償というのはやはりおかしい。報酬なしで色々任される、という点に問題があるのではないでしょうか。


我々は介護支援専門員の活躍の場を増やし、報酬を引き上げ、社会的な評価を高めていくための提言をしていくつもりです。


  −− ありがとうございました。


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