【壷内令子】24時間の連絡体制でケアマネは負担増 居宅介護支援の特定事業所加算は時代に合わせた見直しを
今回は、居宅介護支援の介護報酬の特定事業所加算を取り上げます。要件の1つに「24時間の連絡体制の確保」がありますが、これは再考の余地があるのではないでしょうか。【壷内令子】
居宅介護支援|特定事業所加算
《要件4》24時間の連絡体制を確保し、必要に応じて利用者等からの相談に対応できる体制を確保していること
◆ 事業所の対応方法
特定事業所加算を取得している事業所に、私が主に活動している高松市などを中心にヒアリングを行いました。結果、この要件を満たすための方策は大きく2つに分かれていました。以下の通りです。
① 各ケアマネジャーに携帯電話を持たせ、個々に対応する事業所
ケアマネジャーがそれぞれ担当している利用者・家族のみを受け持つ形で、スムーズに対応できます。ただ、24時間365日、いつ相談・連絡が来るのか予測できないため、常にストレスが伴います。負担の重さに不公平な差が出ないよう、誰がどの利用者を担当するのかも重要な要素となります。
② 当番制で対応する事業所
自分が担当していない利用者・家族からの相談・連絡にも対応する必要があります。対応が難しい場合は、結局のところ担当のケアマネジャーにつなぐことになります。
また、ケアマネジャーの人数が少なければ、当番の回数が多くなってしまいます。ケアマネジャーの人数が多ければ、当番の回数は少なくなりますが、利用者の人数も多いため相談・連絡の頻度も高くなりがちです。
◆ 算定の有無で差はあるのか
私はこの要件に疑問を持っています。その理由の1つは、特定事業所加算の取得の有無にかかわらず、どの事業所も必要に応じて24時間の連絡体制を確保している実態があることです。
例えば、特定事業所加算を取得していない事業所が利用者・家族に対し、「時間外の相談対応は一切行いません。必要なら特定事業所加算を取得している事業所にご依頼ください」と伝えることは考えにくいでしょう。加算を取得していてもいなくても、事業所の対応にはほとんど違いがありません。
であるならば、特定事業所加算の要件にわざわざ24時間の連絡体制の確保を明記する必要があるのでしょうか。
◆ 24時間体制はどこまで必要か
そもそも、24時間の連絡体制がどこまで必要なのか、もう少し明確にする必要があると思います。
国は介護報酬の解釈通知で、この要件について「必要に応じて相談に応じることが可能な体制をとる」と定めています。
これは具体的に何を指しているのでしょうか。真の緊急時のことなのか、それとも他の困りごとの相談も含むということでしょうか。それは本当に、休日や夜間にも対応しなければならない相談なのでしょうか。利用者宅への訪問時や業務時間内を活かせば、十分に対応できる相談も多いのではないかと思います。
利用者・家族も、24時間連絡できるなら時間を気にせず「とりあえず今聞いてみよう」と考えるでしょう。相談の必要性は相談者と受け手の価値観によっても異なるため、その判断はケースごとに違ってきます。多くの場合、ケアマネジャーが利用者・家族の価値観に寄り添って対応しているのが実情です。
◆ 重いケアマネジャーの負担
問題なのはケアマネジャーにかかる負担です。相談者によっては、何度も執拗に連絡してくることだってあります。それに昼夜を問わず対応しなければならないと、精神的にもかなり疲弊してしまいます。
こうした状況は、ケアマネジャーに本来業務以外の仕事をするよう強いるきっかけになったり、カスタマーハラスメントを引き起こす土壌になったりもしています。
もちろん、利用者・家族の生活を支えていくのは重要なことです。
ただ、真の緊急時でないにもかかわらず、休日や夜間にまで対応を求める業務環境は、やはり負担が大き過ぎるのではないでしょうか。ケアマネジャーがバーンアウトするリスクを高めるため、ルールをもう少し明確化したり、24時間の連絡体制を不要としたりする見直しが必要だと感じています。
周知の通り、ケアマネジャーの業務負担が重くなり人材不足が深刻になっています。時代に合った健全な働き方の実現が急務です。こうした具体的な問題も、更に検討する必要があるのではないでしょうか。