2022年11月4日

介護保険を40歳未満にも拡大を 残る待望論 有識者の賛否分かれる=介護保険部会

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《 社保審・介護保険部会 10月31日 》

この構想が直ちに実現する可能性はほぼゼロと言っていい。ただ、中長期的な視点から具体化を求める声は根強く残っている。【Joint編集部】

膨張を続ける介護費を賄っていく“国民負担のあり方”が議題となった10月31日の社会保障審議会・介護保険部会 − 。厚生労働省は今後の制度改正をめぐる論点として、現行で40歳以上となっている被保険者範囲の拡大を取りあげた。


速やかな見直しを目指して提起した、ということではない。待望論が絶えないこの長年のテーマについて、ここで改めて有識者の考えを聴取するという趣旨だ。今回も賛成と反対、それぞれの意見が出た。


UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの染川朗会長は、「40歳未満でも、家族の介護を公的保険サービスで支えてもらえれば安心して仕事と両立できるケースもあり、間接的な受益者となり得る」と説明。「介護を社会で支える、という理念を一層明確にするため、被保険者範囲を18歳以上とする案を軸に議論を進めることが必要」と提言した。


連合・総合政策局の小林司生活福祉局長は、「介護は決して高齢者に限定されたニーズではない」と強調。「政府が全世代型の社会保障を構築しようとしている今こそ、介護を必要とする全ての人を対象とした普遍的な制度とすべき。被保険者と受給者の範囲を拡大すべき」と主張した。


このほか、「保険料の引き上げにも限界があるため、被保険者範囲の拡大を検討すべき」「障害者福祉制度との関係性を整理したうえで、将来的には40歳未満にも拡大すべき」との声もあがった。


一方、日本商工会議所・社会保障専門委員会の岡良廣委員は、「介護保険のメリットを受ける年齢が若い層へ拡大してきているとは言えない。子育て世代、事業者の保険料負担の増加が、消費や経営などに与える影響も考慮すべき」と牽制。健康保険組合連合会の河本滋史専務理事は、「若年層は子育てに関わる負担があり、受益と負担の関係性も希薄。慎重に検討すべき」と促した。


一橋大学国際・公共政策大学院の佐藤主光教授は、「制度の支え手となる勤労世帯の負担への配慮はあってしかるべき」と持論を展開。日本医師会の江澤和彦常任理事は、被保険者範囲を拡大することの賛否こそ明らかにしなかったものの、「この審議会の議論の範疇を超える大きな国家的テーマ。現在の社会状況を鑑みると、被保険者範囲の拡大は極めて困難なのではないか」と語った。


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