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2025年6月9日

要介護認定は「特記事項」重視に! アナログ回帰と批判されても人の目は重要=結城康博

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《 淑徳大学総合福祉学部 結城康博教授 》

厚生労働省が今月2日の審議会(社会保障審議会・介護保険部会)で、要介護認定の1次判定の妥当性を検証する方針を示した。昨年の「規制改革実施計画」の閣議決定がきっかけになったようだ。こうした検証の実施は歓迎したい。【結城康博】

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ようやくか…、という思いだ。今回の動きは感慨深い。


およそ16年前、要介護認定システムの見直しをきっかけとして、介護現場が大きく混乱したことを知らない人も多いであろう。


厚労省は当時、「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」を設けて対応にあたった。私はそこに委員として参画し、調査なども行いつつ議論に関わった1人である。


16年前に何が起きたのか、詳しく振り返るのは別の機会にしよう。関心のある方は、是非この検証・検討会の公式ページをご覧いただきたい。


◆ まず1次判定を簡素に


現在、要介護認定の結果が出るまでには平均で40日超の時間がかかる。これは深刻な状況で、事態を打開するための対策を早急に講じるべきだ。


そこで、今回の動きに乗じて提案したい。要介護認定システムの「特記事項」の重要性を改めて確認しつつ、30日以内に結果が出るような手法に見直していくべきではないだろうか。


周知のように要介護認定では、基本調査(74質問項目)の結果を基にして1次判定が行われる。私は、できる限り質問項目を減らすことにより、概ね30分以内で調査を終えられる仕組みに改めるべきと考える。


現在、認定調査員やケアマネジャーなどの人材不足が深刻化し、先述のように認定結果が出るまでに多くの時間を要している。そのため、介護サービスを利用したくてもスムーズに開始できない高齢者が増えており、これは決して看過できない問題だ。1次判定ロジックは簡素化し、現場の専門職にかかる負担の軽減につなげるべきではないだろうか。

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◆ コンピューター判定には限界も


質問項目を簡素化する代わりに、「特記事項」をより重視する手法にしていくべきと考える。コンピューター判定の精度をいくら高めても、妥当性・公平性の担保には限界があると言わざるを得ないためだ。


例えば、施設か在宅かなど利用者の居住環境が異なれば、介護サービスの必要度、かかる時間・手間なども微妙に違ってくる。また、認知症や心身機能の状況は、相手が生身の人間だけに、杓子定規に判断することがどうしても難しい。


そのため、認定調査員らが特記事項を的確に記入し、それを認定審査会で丹念に汲み取りながら、主治医意見書やコンピューター判定も考慮しつつ、結果を出す仕組みにすべきではないだろうか。


市町村はしばしば、1次判定と2次判定の食い違いを消極的に捉えがちだ。しかし、そもそもコンピューター判定のみで生身の人間の状態を捉えきることには限界がある。認定調査員が記入した「特記事項」を重視することで、より的確な状態の把握が可能になるのではないだろうか。

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◆ やはり最後は人の目で


もちろん、「特記事項」を重視する手法も簡単ではない。認定調査員の質の担保が不可欠だ。また、認定審査会の特記事項を汲み取るスキルも同様に欠かせないため、一定の研修制度の構築が必要になるだろう。


AIやICTの活用が叫ばれている中で、「特記事項」を重視するという提案は「アナログ回帰」と揶揄されるかもしれない。


しかし、いくらシステム化やコンピューター化を進めても、やはり専門職の“人の目”による判断は重要である。今回、1次判定の妥当性を検証する動きに乗じて、「特記事項」の重要性を改めて確認すべきではないだろうか。


◆ 審査会システムも再考を


このほか、認定審査会のあり方も再考すべきであろう。今後、現行のような認定審査会を経て結果を出していくことは、人材不足で一段と難しくなると言わざるを得ない。今回の機会を捉え、認定審査会のあり方も変革すべきと考える。


具体的には、市町村職員(専門職)を中心に認定審査会を構成していくべきである。そして、区分変更に限って現行の認定審査会で判定することを提案したい。通常の認定申請については、市町村職員中心の認定審査会で結果を出すことにより、時間の短縮を図れるのではないだろうか。


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