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2026年1月4日

更新制廃止と賃上げなぜ実現? ケアマネ協会・柴口会長が語る潮目の変化と“本当の勝負”

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《 日本介護支援専門員協会・柴口里則会長 》

昨年末に成立した今年度の補正予算で、居宅介護支援のケアマネジャーが国の賃上げ策の対象に初めて含まれた。これは一時的な措置ではない。政府は介護報酬の臨時改定に施策を引き継ぎ、今年6月から居宅介護支援を「処遇改善加算」の対象に新たに加える方針を決定した。【Joint編集部】

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厚生労働省は併せて、ケアマネジャーの負担軽減に向けて資格の更新制を廃止することも決めた


こうした動きを「歴史的」と評する関係者もいる。捉え方は三者三様だが、長年の懸案がここに来て一気に動いたことは確かだ。


今なぜ風向きが変わったのか。この状況をどう受け止めるべきか。日本介護支援専門員協会の柴口里則会長に聞いた。


◆「介護支援専門員は欠かせない存在」

《 日本介護支援専門員協会・柴口里則会長 》

「まずは安心しました。ここまで来るのに長い時間がかかりましたからね」


柴口会長は何度も頷きながら、これまでの経緯に思いを馳せた。


かつて、ケアマネジャーに向けられる業界の視線は非常に厳しかった。「ケアマネジメントの質の向上」ばかりが叫ばれ、更新制の導入をはじめとして教育・指導の強化が求められる時代が続いた。


しかし今、そうした逆風はかなり弱まったと言っていい。「少し前はよく『ケアマネジャーは質が問題だ』などと言われましたが、今は『地域で頼りになる存在だ』と評価され、励まされるようになりました。制度の枠だけにとどまらず、高齢者の支援に幅広く、地道に取り組んできた現場の介護支援専門員の実践が、ようやく理解されたのです」


柴口会長は、全国のケアマネジャーや相談支援専門員などと連帯して25万筆以上を集めた署名活動や、他の関係団体との協働による政府・与党への働きかけも実を結んだと説明。現在のケアマネジャーの立ち位置を独特な比喩で表現した。


「介護支援専門員はお寿司の『お醤油』のようなもの。無いと主役も輝けない。地域にとっての立役者で、絶対に欠かすことのできない存在。それがようやく皆に伝わったのではないでしょうか」

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◆ 譲れない基本報酬の引き上げ


もっとも、ケアマネジャーの処遇改善はまだまだ道半ばと言わざるを得ない。柴口会長が見せたのは、「これで十分」という議論の幕引きへの警戒感だ。


「今回、処遇改善加算の対象に含まれたことは大きな一歩ですが、これはあくまで『入口』に過ぎません。私が最も危惧しているのは、本丸の基本報酬が上がらなくなることです。専門職としての価値を安定的に評価してもらうためには、基本報酬の引き上げと加算の拡充の2本立てが欠かせません」


さしあたり目指すべきゴールについて、柴口会長は具体的な数字を掲げ続けている。


「最低でも平均年収500万円。そこまで届く給与体系にしていかなければなりません」


来年度の臨時改定を新たなスタートラインと位置付け、今後も国への働きかけを「一層強化していく」と意欲を見せた。

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◆ 問われていくプロ意識


もう1つのトピックは更新制の廃止だ。柴口会長はこの大きな転換を、「介護支援専門員の負担の大幅な軽減につながる英断」と評価しつつ、一抹の不安をのぞかせた。


「研修はもうしっかり受けなくてもよい、と捉える人が増えてしまうと良くないと思っています」


更新制が廃止されれば、研修受講の制度的な強制力は現状より弱まる。柴口会長はこれを踏まえ、「今後は自らの意思で主体的に研鑽を積まなければならなくなります。国に強制されなくても、自らを律して学ぶ姿勢を保ち続けていけるか。専門職としてのプロ意識がより厳しく問われる時代になるでしょう」と指摘した。


同時に、居宅介護支援を運営する事業者の責任も重くなる。柴口会長は、「これからは事業者が意識的に、個々の職員が研修を無理なく受けられる時間と費用を保障していかなければいけません」と強調した。


自律的に学んでいくケアマネジャーと、環境を整えてそれを下支えする事業者。その両輪が揃わなければ、せっかく勝ち取った評価がやがて失墜していくのではないかと危惧している。


◆「ここからが本当の勝負」


念願の処遇改善と更新制の廃止。これが実現したのは、現場で活躍するケアマネジャーがおよそ25年の歳月をかけて勝ち取った信頼の証だ。


「今後も愚直に、自分たちができること、やるべきことをひとつひとつ積み上げていくしかない。そうやって我々の職域と評価を、自分たちの手で作り上げていかなければいけません」


柴口会長はこう強調。今回の改革を追い風に、地域の立役者としての存在感をさらに高めることができれば、一層の賃上げの実現も早まるとの認識を示し、最後は自戒を込めるように言葉を継いだ。「ここからが本当の勝負。私たちの真価が問われていく」


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