ケアマネの“サ高住モデル”の転換期 新類型の創設で経営環境はどう変わるか 今こそ「在宅」への回帰を=田中紘太
厚生労働省は昨年末、住宅型有料老人ホームの入居者に特化したケアマネジメントの新たなサービス類型を創設する方針を決めました(*)。【田中紘太】
* 登録制など新たな事前規制の対象となる住宅型ホームの入居者が対象。
業界内では異論・批判も含めて様々な声が上がっているようですが、私は大賛成です。
ようやく、居宅介護支援の事業環境が正常化される時が来たと前向きに捉えています。これまで住宅型ホームの入居者に依存してきた居宅介護支援事業所は、経営の根幹を揺るがす大幅な減収に直面することになるでしょう。
新類型の創設が与えるインパクトはいかほどか。我々ケアマネジャーが今すべきことは何か。私なりの見解を述べたいと思います。
◆ 正常化への号砲
私がこれまで国に訴え続けてきた制度上の課題があります。それは、業務の負担と報酬のバランスが必ずしも適正とは言えない現状です。
現状、住宅型ホームの入居者を多く持つメリットは非常に大きいです。
移動時間は少なくて済み、トラブル対応も多くは施設側に任せられます。要介護度の重い入居者を効率的に集められ、高い基本報酬や「特定事業所加算」「ターミナルケアマネジメント加算」「医療介護連携加算」などを得るハードルは大幅に下がります。
つまり、一般的な在宅と比べて負担が圧倒的に軽く、容易に高収益をあげられるわけです。現行の制度は、こうしたビジネスモデルが横行する結果を招きました。
収益を効率的に上げやすい事業所に人材が流れ、結果として高水準の給与でさらに人材を集める循環が生まれています。一方、真面目に在宅を支える事業所はますます疲弊してしまいます。
新類型の創設はこうした状況を是正するもので、業界にとって抜本的な適正化が進められると言えるでしょう。
◆ サ高住モデルは行き詰まる
では、新類型の評価はどうなるのでしょうか。まず基本報酬ですが、私は現行の要介護1・2の水準より低く設定されると見込んでいます。根拠は明確です。
第一に、国のタイムスタディ調査の結果(2022年度老健事業)です。住宅型ホームの入居者のケアマネジメントにかかる時間は、平均で月82.7分。これは在宅の要支援1(89.2分)をも下回っています。現行の要介護1・2より高い基本報酬が設定される理屈はありません。
第二に、診療報酬との整合性です。医療の世界を見ると、同一建物に住む患者への訪問診療料(施設入居時等医学総合管理料など)は、在宅の3分の1から4分の1程度まで抑えられています。給付費の適正化の観点から、こうした論理は介護報酬にも適用されていくと考えられます。
新類型の基本報酬はかなり低く設定される。今のうちからそう見込んでおくのが賢明です。
新類型ではさらに、居宅介護支援の「特定事業所加算」「ターミナルケアマネジメント加算」「医療介護連携加算」などを、従来のように取得できなくなる公算が大きいと言わざるを得ません。多くの事業所が、基本報酬の引き下げと加算の算定要件の厳格化という二重に厳しい改定となる可能性が高いでしょう。
住宅型ホームの入居者への依存度が高い事業所は、やはり大幅な減収に直面することになると思います。人件費を下げられないとなると、経営は一気に行き詰まってしまうのではないでしょうか。
◆ 監視の目の強化も不可避
現時点で想定し得る新類型のビジネスモデルは、例えば単価の低い住宅型ホームの入居者を非常に多く受け持つ形です。ただ、事業所が直面するのは減収だけではありません。行政による監視の目の強化も避けられないでしょう。
有料老人ホームのあり方を議論した厚労省の検討会のとりまとめには、ケアマネジメントの独立性の担保や行政による指導監督の徹底が明記されました。他のサービスと比べても、事業所の運営指導などは特に厳しくなるはずです。新類型の事業所と住宅型ホームとの関係性の透明化に向けて、情報の公表や会計の分離も強く求められることになるでしょう。
結果、これまでのように効率よく稼ぐことは難しくなるでしょう。
リスクとコストが見合わず、ケアマネジメントの質や独立性を重視する事業所ほど、新類型の指定を受けずに運営方針を見直すことになるはずです。私は現時点では、既存の事業所の大半が住宅型ホームから離れていくのではないかと予測しています。
◆「在宅シフト」への早期着手を
住宅型ホームの入居者に依存したビジネスモデルの崩壊は、避けて通れない未来です。もはや時間の問題となりました。重要なのは、制度改正の完全施行までにまだ一定の猶予期間がある(*)ことです。
* 厚労省は新類型の創設・施行の時期をまだ明らかにしていない。
全国のケアマネジャーに提言させてください。今すぐ在宅へ舵を切ってください。
この猶予期間を「現状維持」のまま過ごすか、本来の地域のケアマネジメントへ回帰するために使うか。今後の優劣はそれで決まるでしょう。早期に取り組むことが、将来の安定経営につながります。
今回の新類型の創設は、全国のケアマネジャーに本来の役割を全うするよう軌道修正を迫るものです。都市部も地方も関係なく、求められていることは同じです。
もともと王道を歩んでいる事業所にとって、この制度改正は何の脅威でもありません。むしろ追い風となっています。今こそケアマネジャーは地域に根を張り、そこで真にあるべき姿を体現すべき時です。










